大城 明緒(博士課程1年)
バックチャネルとノートテイキングの融合による大学講義改善の支援
昨年度は、「講義における外的関連づけを支援する協同ノートテイキング方法に関する検討」という題目で修士論文を執筆しました。そこでは、2人で役割分担を行いながら、一緒にオンラインでノートを取る場合と、1人でノートを取る場合とを比較し、講義内容と学習者自身の既有知識とを結び付ける記述(外的関連づけ)の数に差があるかを検討しました。その結果、2人で取る場合と1人で取る場合とで統計的な有意差は見られませんでしたが、2人で取る場合には、外的関連づけが促進されるペアと、促進されないペアに分かれることがわかりました。
修士研究で提案した協同ノートテイキング方法は、2人1組を単位とするノートテイキング活動でしたが、その成功要因を高めるための改善案の1つとして、授業中に他の学習者ペアのノートを閲覧・利用可能にすることの必要性を主張しました。すなわち、講義中のノートを公開・共有・利用し、多人数でのバックチャネルに拡張していく必要性です。
バックチャネルとは、McCarthy and boyd (2005) によれば、1つのことに意識を集中しており、人々が対面状況にあるような場において、CMC(Computer Mediated Communication)ツールが二次的・背景的役割を果たすことで形成されるものを指し、Chan et al. (2006) によれば、その中心的な機能は、既存のフロントチャネルに対する二次的または背景的な補完物としての利用にあります。これらをまとめると、バックチャネルは、「対面状況にある参加者が共通のトピックに注目している場面において、フロントチャネルを補完するコミュニケーションチャネル」と定義することができます。
McCarthy and boyd (2005)は、バックチャネルのメリットとして、「プレゼンテーションやミーティングを邪魔することなく質問を投げかけ、回答を得ることができる点」や「ミーティングのトピックを拡張するようなヒント情報・関連情報を提供することができる点」等を挙げている一方で、デメリットとして、「聴衆とスピーカー、双方とも気が散ること」等を挙げています。また、Chan et al. (2006)も、大学授業におけるバックチャネルとしてのチャット利用について、そのデメリットの1つとして、認知的負荷のオーバーロードを挙げています。
昨今は、Twitter(http://twitter.com/)等のマイクロブログのサービスが徐々に浸透し、講義というフロントチャネルを妨げることなく、受講者間で講義内容についてコミュニケーションをとることがますます容易になりつつあります。大学の講義型授業の改善を図るうえで、講義時間内のバックチャネルの利用の観点は無視できず、むしろ積極的に活用していくべきです。多人数での利用における認知的負荷の問題も考慮に入れながら、講義内容の理解に結びつくバックチャネルの利用方法を提案できるよう、今年度も研究を進めていきたいと思います。
(参考文献)
Chan, S., Mitnick, S. and Yardi, S. (2006) ClassChat: A Tool for Visualizing Backchannel Discussions. Final Project Submitted to UC Berkeley’s School of Information for the Requirements for the Masters in Information Management and Systems.
McCarthy, J. F., and boyd, d. m. (2005) Digital Backchannels in Shared Physical Spaces: Experiences at an Academic Conference. CHI 2005: 1641-1644

