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伏木田 稚子(博士課程1年)

大学教育における学部ゼミナールの構造と学生の学習成果に果たす役割の検討


 大学教育の柱である授業は,講義形式とゼミナール形式の2つに大別され,両者の違いはわかっていることの伝達とわからないことの追求にあるとされています(赤堀 1998)。今日の大学教育改革においては,学生が習得すべき知識やスキル,態度などの学習成果を明確にすることに力点が置かれていますが,講義形式に比べてゼミナール形式の授業においては,そうした取り組みが進められていないのが現状です。なお,大学教育の質を保証するためには,(1)授業科目,(2)学部・学科などの教育プログラム,(3)大学全体の3段階で学習成果を評価することが重要である(川嶋 2008)とされています。

 ゼミナールは,19世紀初頭のドイツにおいて,研究を通じての教育という理念のもとに誕生した仕組みであり,日本では20世紀初頭に演習として導入されたという経緯があります(潮木 1997)。ゼミナールのあり方は,教育する場の条件において多様であり,他の実践と比較される機会が少ないなどの理由から,実証的な研究は十分に行われていません(毛利 2006,2007)。ただし,豊かなゼミナールは学生同士が仲間として学び合う対面的な側面を内包しており(船曳 2005),そうした教員と学生間の対話は,理解の促進や多面的な能力の習得,学生意欲の情勢につながるといった教育効果が期待されています。

 近年,授業評価を実施する大学は増加しているものの,大学の学習環境を多面的に捉え,学習成果との関係を論じた研究が不足している現状や,専門教育の観点から学士課程教育のあり方を考察する価値が認められている(天野 1998; 福留 2010)背景を踏まえ,修士研究では,学部3,4年生を対象に開かれているゼミナールに焦点を当てました。専門教育としてのゼミナールにおける学習者要因(学習意欲),学習環境(活動,教員による指導,教員に対する評価,共同体意識),学習成果(汎用的技能の成長実感,充実度)の関係を実証的に検討し,ゼミナールにおいては学習意欲や共同体意識が学習成果につながる要因として重要であり,それらの要因を促進するのは教員による指導であることを明らかにしました。
(詳しくは, http://wakako-fushikida.net/masterthesis/top.htmlをご覧ください。)

 博士研究では,こうした知見を踏まえ,学習意欲や共同体意識を形成するために,教員がどのような点に配慮し,どのような工夫を指導に織り交ぜているのかという観点から,ゼミナールにおける学びをより構造的に検討していきたいと考えています。

【参考文献】
赤堀侃司 (1998) 大学授業改善の特徴と技法の共有化.大学教育学会誌,20(2) : 63-66
天野郁夫 (1998) 専門教育を問う.大学教育学会誌,20(2) : 31-34
福留東土 (2010) 専門教育の視点からみた学士課程教育の構築.大学論集,41 : 109-127
船曳健夫 (2005) 大学のエスノグラフィティ.有斐閣,東京
川嶋太津夫 (2008) ラーニング・アウトカムズを重視した大学教育改革の国際的動向と我が国  への示唆. 名古屋高等教育研究,8 : 173-191
毛利猛 (2006) ゼミナールの臨床教育学のために.香川大学教育実践総合研究 ,12 : 29-34
毛利猛 (2007) ゼミ形式の授業に関するFDの可能性と必要性.香川大学教育実践総合研究,15   : 1-6
潮木守一 (1997) 京都帝国大学の挑戦.講談社,東京