2016.11.10

【山内研っぽい1冊】「未来の学び」をデザインする

 今週の【山内研っぽい1冊】シリーズ、D3佐藤朝美が担当します。 
 山内研には、隠れ美大派閥があります(!?)。下記、個性的なメンバーで、自由な発想、常識にとらわれないエッジの立つ方々にも関わらず、研究という枠組みでエビデンスを残すことにトライする(した)チャレンジャーな面々です。

 ・八重樫文(武蔵美出身:2004年度卒)
 ・早川克美(武蔵美出身:2013年度卒)
 ・(武蔵美出身:D3)
 ・吉川久美(武蔵美出身:M2)
 ・江崎文武(東京芸大出身:M1 [※1])
  [※1] 「芸大」ですがゆるくグルーピングさせて頂きます

 そんな方々が研究室に集まり、一定の卒業生・在籍生がいることは、山内先生の視野の広さ、思考の柔軟さ、研究領域の可能性の大きさを示しているのだと思います。そして今回、背景が多様な人達が集まる山内研究室らしい一冊として、「『未来の学び』をデザインする―空間・活動・共同体」を挙げさせて頂きます。

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「未来の学び」をデザインする―空間・活動・共同体
美馬 のゆり (著), 山内 祐平 (著)
東京大学出版会 (2005/04)
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 10年前の出版となってしまいましたが、当時研究室で学び始めたばかりの私にとって、「学びをデザインする」という言葉は何よりも新鮮でした。学びの楽しさ、学び続ける大切さ、学ぶ活動そのものが変化していくことなど、今も色褪せないコアな要素が凝縮されています。本書では学びの形を、「空間」「活動」「共同体」の3つの角度から解説しています。

「空間」
 ここで私が驚いたのは、「美術系大学における学び」が取りあげられていた事でした。作品を制作する空間をアトリエ的学習空間と捉え、制作的過程が他者に見えること、インタラクションが共有されることを学びの重要なポイントとして注目しています。雑多な空間で制作してた体験を改めて振り返り、あのような中にある学びが、「学び」として捉えても良いのだという不思議な感覚を覚えました。

「活動」
 ここでも「ものづくりを通した学び」について着目されており、とても新鮮でした。「ものづくり」が学ぶことへの動機づけとなり、それが深い理解につながること、確かに私自身も多々経験してきました。疑問を持たず過ごしてきた体験にメスを入れて下さり、「つくって・語って・振り返る」ことの効果を示している内容が、目からウロコでした。

「共同体」
 この章は、「学習は一人でするものですか?」という問いかけから始まっています。昭和世代の、ハモニカ校舎で、一斉講義中心の、ただひたすら聞いて学ぶことが「教育」であると考えてた私にとって、そうは言っても・・・と飲み込めないテーマでした。が、「いくつかの領域にまたがる境界での実践における葛藤状態が、新しいことを発見したり発明したりする『創発的学習』のための土壌になる」という解説は、今の共同研究をやらせてもらっている状況において、鋭く突き刺さります。

 以上、個人的な振り返りからの内容紹介でしたが、「未来の学び」をデザインすべく、多様なジャンルの方が山内研究室に集まる理由が伝わったのではないかと思います。

 ちなみに・・・
 美大出身メンバーが手がける下記書籍を携えていたならば、ツウな方から山内研っぽいねと指摘されるかもしれません♫

デザイン・ドリブン・イノベーション
Roberto Verganti (原著), 佐藤 典司 (翻訳), 岩谷 昌樹 (翻訳), 八重樫 文 (翻訳)
同友館 (2012/07)

デザインへのまなざし―豊かに生きるための思考術
早川 克美 (著)
幻冬舎 (2014/4/3)

 そして・・・
 本ブログをきっかけに、未来の美大出身メンバーが増えることを密かに願ってます!

 【山内研っぽい1冊】シリーズは今週で終わりです。次週から新たなテーマが始まります!どうぞお楽しみに・・・

佐藤朝美

2016.11.04

【山内研っぽい1冊】『Lost Opportunities』

こんにちは。D1の池田です。山内研っぽい1冊シリーズも残す所2回となりました。
今回、私からは『Lost Opportunities』というタイトルの本を紹介しようと思います。

学校外における子どもたちの学びについて書かれた本で、2014年度に山内研で輪読していた本でもあります。

さて、学びとはどう言った場で起こるものなのでしょうか?
一般的に、学びが起こる場所として学校や教室とイメージする人が多いかもしれません。
しかしながら、我々は学校においてはもちろん、学校外の場所、時間においても様々なことを学んでいます。

この本の中で紹介されているものを例にとると
例えば、水族館に訪れた親子の以下の会話の中にも科学に関する学びがあります。
例) 2歳の女の子と父親が、水槽の中で泳いでいる魚を見ている場面における会話
女の子:なんでこの魚は毛皮を動かしているの?
父:毛皮?これはえらだよ。
女の子:なんで、この魚はえらを動かしているの?
父:水中で呼吸をするために魚たちはえらを動かすんだよ。

会話の中で父親は目の前のこの魚だけではなく、「水中で呼吸をするために魚たちはえらを動かすんだよ。」と述べることで、目の前で起きている個別具体的な事象を一般化しています。認知発達の観点からみても2歳児は、目の前で起こる個別的な事象が、個別的にだけ起るのでなく、一般的な事象であるということを理解できるとされているため、女の子はきっと、魚たちはエラを使って呼吸をするんだということを学んだと考えられます。

このように、授業や教科書を通じてはもちろんのこと、日常の中で、様々なものを見る中で、他人と会話をする中で"学び"が生じています。また、学外で経験したことや学んだことを、学校での学習に生かすことによってより深い理解が促されることも示されてきています。
『Lost Opportunities』では、特にSTEM領域の学習を中心に、教室外での学びや、教室外で得た知識と学校での学びの接続等についての研究について紹介されています。面白い事例がたくさんのっているので興味がある方は是非。以上、様々な場面での学習を扱っているところが、なんだか少し"山内研っぽい"と思いこの1冊を紹介させていただきました。最終回はD3の佐藤さんです。

【池田めぐみ】

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