2013.09.27

【突撃OB・OGインタビュー】 柴田アドリアーナさん

みなさま、こんにちは。
M1の中村絵里です。

先週末の連休は、山内研の現役ほぼフルメンバーとOB・OGの諸先輩方が一堂に会する年に一度のビッグイベントがありました。日本教育工学会(JSET)の全国大会です。第29回目の今年は、秋田で開催されました。
秋田の会場では、これまでお名前を伺うだけだった山内研のOB・OGの方々や、本インタビューシリーズで登場した先輩方にもお会いすることができ、まるで、物語の登場人物に現実世界でも出会えたような感動を覚えました。
JSET全国大会では、他大学の著名な先生方の発表を間近で聞くことができたり、また、他大学の研究領域の近い先生および院生と知り合える機会があったりと、大変刺激的で、充実した3日間でした。

さて、今回インタビューさせて頂いた山内研のOGをご紹介します。

柴田アドリアーナさん(2012年3月修士課程修了)です。
柴田さんは、日系ブラジル人(御祖父が日本人)で、2009年~2012年までの約3年間日本に留学され、「在日ブラジル人児童を対象としたデジタル日本語教材の開発」について、研究なさいました。
柴田さんは、昨年ブラジルに帰国されましたので、実際のインタビューではSkypeTMのビデオ通話を利用してお話を伺いました。日本は夜、ブラジルは朝、半日の時差を超え、地球の裏側との会話を楽しみました!

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Q1:まず、日本に留学しようと思った理由を教えてください。

日本には、留学前にも訪れたことがありました。
初めて日本に行ったのは、1999年。ブラジル現地の日本語学校に在籍する生徒を対象としたJICAの研修で、1ヵ月間横浜に滞在し、日本の中学校に体験入学しました。
2度目の訪日は、2008年。日本の外務省による招へいプログラム「21世紀日伯指導者交流計画」Invitation Program for young leaders between Japan-Brazil - Pop Culture (1)に参加しました。2008年は、「日本人ブラジル移住100周年」で、当時グラフィックデザイナーの仕事をしていた私は、100周年の記念切手のデザインをしました。このときの記念切手のデザインの仕事がきっかけとなり、日本語学校の先生からこのプログラムの紹介を受け、参加することになりました。

日本滞在中、日本の音楽、アニメ、料理などのPOPカルチャーを体験しました。また、プログラムの一環で、在日ブラジル人の住人が多い群馬県大泉町を視察し、日本の公立中学校とブラジル人学校の生徒と交流しました。その時、日本に住んでいるブラジル人の子ども達向けの教材に興味を持ちました。当時、グラフィックデザインの仕事に加えて、ブラジル現地の日本語学校で初級日本語を教えていたこともあり、日本語および日本語の指導教材には関心があり、「もっと楽しく、効果的に日本語を教えることができないか」と考え始めました。

ブラジルに戻ってから、日本語学校の先生に相談をしたところ、それなら、日本の大学院に留学して、在日ブラジル人のための日本語教材を開発する研究をしてみたらどうかと勧められました。幸い、二つの大学院に合格内定。一つは九州にある大学院で、主にデザインを学ぶコースでした。もう一方が、東京大学大学院学際情報学府でした。山内研究室では、教育や学習環境について多面的に学べるとわかり、東京大学大学院に進学することを決めました。


Q2:留学中、苦労したことはありますか。

履修した授業は、ほとんどが日本語による講義でした。日常生活の日本語には苦労しませんでしたが、日本語で授業を受けるのはやはり難しかったですね。特に専門用語や学術用語には、初めのころは随分戸惑いました。山内研のゼミでは、教育用語や心理学の用語なども出てきますし。日本語に不安があったので、レポートなどでは山内研の先輩や同期に、日本語の誤りを直して頂き、たくさん助けてもらいました。山内先生をはじめ、ファシリテーター、研究室のメンバーにはいつも懇切丁寧にサポートして頂き本当に感謝しています。
I really appreciate the support I received from professor Yamauchi, my colleagues and Facilitators during all the process. They were all very kind and patient!


Q3:現在の仕事について教えてください。

帰国後の初めの1年は、逆カルチャーショックを受けてしまい、混乱しました。ブラジルに帰国したのが正しい選択だったのかと何度も自問しました。

今は、主に二つのことに取り組んでいます。
一つは、留学前と同じグラフィックデザインの仕事です。在ブラジル日本大使館・領事館やJICAからデザインの仕事を受けたりしています。昨年の6月にリオ・デジャネイロで「国連持続可能な開発会議(Rio+20)」が開催された時には、JICAブースのポスターを制作しました。郵便局の仕事も受けています。2008年の日本人ブラジル移住100周年に加えて、2012年には、華人ブラジル移住200周年の記念切手、Rio+20の時には「風力発電」をテーマにした記念切手もデザインしました。

もう一つは、公務員試験を受けるための勉強です。ブラジルの中央銀行が運営する組織で、遠隔教育プロジェクトを導入した大学も設置されています。私は、Management and Procedural Analysisの分野を受験しますが、試験科目の中には、一般科目に加えて専門科目があり、組織学習(Organizational Learning and Education)、コミュニケーション理論、ビジネスマネジメント、行政法、民法などが含まれます。実はこの公務員試験に「組織学習」の科目が導入されたのは初めてのことで、その科目に関心が高かったので受験することにしました。組織学習には、教育理論、指導デザイン、知識マネジメントのテーマがあります。今は、山内研の合宿で学んださまざまな理論の復習をしています。ピアジェ、デューイ、ヴィゴツキーなど、、、合宿が懐かしいです。

今後ブラジルでは、遠隔教育に人材が必要になってくるので、人の学び、組織の学びについてさらに知識を深め、この分野で仕事をしていきたいと願っています。合格したら、こちらの企業内大学(Corporate University)で働きたいです。教育分野で仕事ができますし、おそらくデジタル教材関連の仕事にも携われるからです。山内研で学んだことと関連の深い分野ですので、留学時代の学びが今につながっていると感じます。


Q4:日本での留学生活をふりかえって、印象に残っていることは何ですか。

山内研の毎週のゼミと研究室における学習環境です。山内先生のご指導のもと、専門性を持った助教、先輩方と一緒にゼミで討議できたこと、山内先生が創り上げるゼミと研究室の組織構造、それらは特に印象に残っています。

そして、日本の社会構造。留学中の2011年3月に東日本大震災が起こりました。あれほどの大災害があったときでも、落ち着いていられました。シェアドハウスの友人と一緒にいて、励まし合えたからという理由もあったとは思いますが、それ以上に日本の社会が安定していることが心の平穏を保つことができた要因でした。もしブラジルで同じように大きな地震などがあったら、きっと不安が大きかっただろうと思います。自分自身も、そしてブラジル社会全体も。


Q5:最後に、山内研究室の後輩に向けて一言メッセージをお願いします。

豊かな情報があり、助けてくれる人がたくさんいる。研究をするのには素晴らしい環境だと思います。たくさんのアドバイスが先輩や同期からもらえるので、それらを大切にしてください。
Focus! You are surrounded by tons of information and people who are extremely capable to guide you through the process. So, take your time to absorb this information and reflect upon your project.


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柴田さん、この度は、突然のインタビューご依頼にも関わらず、快くお引き受けくださりありがとうございました。
昨年6月に、リオ・デジャネイロで開催された「国連持続可能な開発会議(Rio+20)」の際は、私は仕事として日本の外務省の展示ブースの企画・制作に携わっていたのですが、Rio+20と関わる仕事を柴田さんもされていたとわかり不思議なご縁を感じました。
また、柴田さんが山内研における学びを活かして、今も関心分野を深めるべく次のステージに向けて努力しておられると伺い、人間の学びは、生涯続いていくものだと改めて感じました。柴田さんからアドバイス頂いたとおり、山内研の豊かな学習環境に感謝しながら、一つ一つのゼミや先輩・同期の仲間との関係を大切にして、これからも研究に邁進したいと思います。

※インタビューは日本語で行いましたが、部分的に英語で補足して頂いたところは、そのまま柴田さんの英語を入れています。

【中村絵里】
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(1) 外務省 平成19年度招へいプログラム「21世紀日伯指導者交流計画」http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/latinamerica/kouryu/seinen/brazil07_gh.html

2013.09.24

【突撃OB・OGインタビュー】荒木淳子さん

皆様こんにちは、修士1年の池田めぐみです。
朝晩は肌寒く、もうすっかり秋らしくなってきましたね。

インタビュー第6回目となる今日は、産業能率大学、情報マネジメント学部で准教授をなさっている荒木淳子さんにお話を伺わせていただきました。


在学時は「企業で働く個人のキャリア発達を促す学習環境に関する研究ー職場、実践共同体、越境ー」 というテーマで研究をなさっていた荒木さん。


企業と高校で舞台は違えど、自分と同じ"キャリア"というものに興味をもっていらっしゃる荒木さんに是非ともお話を聞かせて頂き、たくさんのことを学ばせて頂きたいと思い、今回は荒木さんにインタビューさせて頂きました。

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○現在のお仕事内容について教えて下さい。

産業能率大学、情報マネジメント学部で准教授をしています。授業は、1、2年生が中心で、1年生の基礎ゼミ(レポートや読み書き中心の授業)、2年生のキャリアの授業をもっています。2、3、4年生対象のゼミも持っており、2〜3年生には、自分が関心のある職業の人にインタビューし発表してもらっています。3年次では2年次よりも視野を広く持ち、「働く」ことについて考えられるよう、調査を自分達で設計し実施してもらっています。保育士の早期離職はなぜおきるかの調査などが行われていました。

○現在の研究活動について教えて下さい。
主に2つ行っています。1つめは、社会人の組織や仕事に関わらない学びについての研究です。博士論文では、社外での学びや職場での学びがその人の仕事にどう関わるかについて調査していましたが、最近では仕事に関わらなくても、社外に出たい、学びたいという人(例えばsoclaのような活動)が増えています。なので、そういった人たちがなぜ熱心にそのような活動に関わっているのか、社会人の学習はこれまで仕事やキャリアとの関わりで分析されてきましたが、生涯や人生の中で見たときの学ぶ余地について見ていきたいと思っています。
もう1つは、大学生と社会人の交流実践の研究を行っています。社会人と大学生が自分の仕事や、将来やりたいことについて語り合うワークショップ型の実践です。大学生のみでなく、参加した社会人にとっても学びになるものにするにはどうすべきかを考えています。

○なぜ、研究者という道を選んだのですか?
大学卒業後、一度院に行き、その後、シンクタンクに進みました。研究者になろうと思っていたわけではなく、会社で役立つようなことを勉強したいと思い山内研に入り研究していた所、面白さがましていき、博士課程に進みました。そうしたら、東京大学での助教の話もあったので「やってみよう」と思いこの道に至りました。

○研究者というキャリアの中で難しいと感じることはどんなことですか?
エンジンがまわらないときに、どうやってやり続けるかというのが難しいところだと思います。佐藤さんのインタビューも拝見したんですが、研究者は好きなことがあると自然にエンジンがまわる。でも、その一方で、自分から動かなければはじまらない仕事であり、エンジンがまわらない時が大変だと思うんです。大学に就職すると、授業がありお給料がもらえる。だから贅沢な悩みだとも思うんですが、とくに追い込まれることがない中で、ペースを保ち研究して
いくのは大変だなと思います。


○ペースを保つ為に工夫されていることはなんですか?
あまり保てているかわからないんですが‥山内先生に言われたのは「周りとの関わり。ソーシャルネットワークを作りなさい」ということです。人から誘って頂いたり、人に動かしてもらうこともあり、そういうのが本当に有り難いなと思っています。視野を広くもって、そういった関わりを大切にしていきたいです。



○そういった関わりはどうやってできていくものなのですか?
それがよくわからなくって‥(笑)論文を読んで連絡を下さったりだとか‥さっきと矛盾するようですが、自分もやり続けていくことだと思います。自分もやり続けるためには、人との関わりが大事なんですけど、人と関わる為には自分もやりつづけることが大事というか‥そういう感じがします。

○山内研で学んだことで、現在のお仕事や研究に活きているな思うことはありますか?
手を動かして、自分も社会とかかわっていこうという姿勢だと思います。以前は物事を批判的に見るというか、自分が傍観者してある対象を見るといった感じが強かったのですが、山内研は自分で何かを作っていこうというのが強くって。最初はそれにとまどったのですが、最近では特に、この姿勢が素敵だなと思うようになりました。

○研究する上でのアドバイスをお願いします。
よく山内先生が「自分の好きなことをやりなさい」とおっしゃっていて、それが本当に1番大事だなと自分でも思っています。ぶれないというか!
それと自分の好きなものを突き詰めていくべきなんですけど、それを色んな研究者や色んなものとの関わりの中でつくっていく作業がすごく大事だと思っています。最初にすごくやりたいことがぽつんとあったとしても、それがそのまま研究になるわけじゃない。ぽつんとあった大切なものを大事にしながら色んな文献にあたったり、色んな人と話をしてそれをぶつけて鍛えていくっていうんですか、繋げていくていうのかな‥そうやっていくのが大事だなって思います。

○研究者に向いてる素質や要素は何だと思いますか?
頭の善し悪しとかではなく、"鈍いこと"だと思います。
研究において、続けていくことががとても大事だと思っていて、続けていく為に必要なことが、山内先生ならば「自分のこだわりを形にできる力」藤本さんならば「普通の人がやめるタイミングでやめずに地道に続けられること」(※1)のように表現されているのだと思います。
私の場合は、自分に正直に、鈍くなることが大切だと思います。社会にはこれをしなくては就職できないなどのような制約が意外に多い。でも研究は自分からかかわり発信していくもの。なので、時には雑音になるその制約を無視し、やり続けられる"鈍さ"が大切だと思います。


(※1:Ylab blog 【山内研夏合宿密着レポート】参照)

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インタビューをさせて頂いて、色々な研究者や色々なものとの関わりの中で自分の好きなものを突き詰めていくというお話がとても印象に残りました。

自分の好きなことをやることが大切ですが、自分ひとりでは、考え方が狭くなってしまったり、息詰ってしまうことも多々あります。

周りの皆様との関わりあいや、幅広く文献にあたっていくことを大切にし、自分の中にあるやりたいことを、ぶつけて鍛えて繋げていかねば。

インタビューに協力して下さった荒木さん、本当にありがとうございました!!


池田めぐみ

2013.09.13

【突撃OB・OGインタビュー】椎木 衛さん(株式会社ベネッセホールディングス)

皆さまこんにちは、山内研M1の青木智寛です。
残暑が厳しいものの、夕方になるとだんだんと涼しくなり、秋の訪れを感じる最近ですね。
読書の秋・スポーツの秋・食欲の秋...だけでなく研究の秋にもしていきたいと思っている今日このごろです。

さて、今回、山内研ブログ特別企画【突撃OB・OGインタビュー】ということで、第5回目の記事は、
株式会社ベネッセホールディングスの 椎木衛 さんのインタビューの模様をお伝えしたいと思います。

椎木さんが勤めていらっしゃるベネッセでは、僕がこれから研究のテーマにしていきたいと思っている、ICTを利用した学びに関連する事業もされているということで、今回突撃インタビューをさせていただきました。

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◯現在のご所属と、お仕事の内容について聞かせて下さい。

現在、株式会社ベネッセホールディングスのグローバルソーシャルイノベーション部に所属しており、新規事業の開発をしています。

ベネッセというと、昔から進研ゼミや進研模試といった事業で有名ですが、ベルリッツ(※1)やベネッセスタイルケア(※2)などの、通信教育や模試以外の事業も進められており、このような、5年後、10年後にベネッセを支えるような新規事業の開発をすることに従事しています。
今やっていることは、具体的に大きく分けて2つあります。
1つ目は電気自動車の研究開発と普及活動です(※3)。ベネッセが電気自動車?と思われる方も多いと思いますが、子どもたちの未来の地球環境、生活環境を総合的に捉えたときの、学習環境にとどまらない未来の子どもたちの生活に必要なものとしての電気自動車の普及を考えています。
2つ目は新興国におけるソーシャルメディアの活用についての研究開発と普及活動です。こちらも教育に限らず、人々の生活全体としてのソーシャルメディアの可能性について活動に取り組んでいます。


◯山内研に所属するに至った経緯を聞かせていただけますか?

山内研に所属していたのは2003年から2005年の修士の2年間なのですが、その当時はマーケティング部に所属していました。
ちょうどその頃は、インターネットをビジネスに応用させるということが盛んになっていました。ベネッセでも、通信教育の形態が紙媒体中心から、ネットワークやマルチメディア教材とMIXしたものに変化していたところです。そこで、自分もそのような状況での教育のあり方について学ばなければ、と思いながらも、会社内や書籍だけで学ぶことになんとなく限界を感じていました。もっと体系的に知識を吸収し、同じ領域を学ぶ仲間と切磋琢磨することで知識を深めたいと思っていたところ、情報学環の山内研に出会いました。自分は社会人であるということもあり、山内研で学ぶことができるかどうか非常に不安でしたが、山内先生とご相談させていただいたことも励みになって、入試にも合格し、山内研での2年間を過ごすことになりました。


◯社会人をされながら修士生として学生生活を送られたということですが、苦労したことはありましたか?

学校まで移動して授業を受けなければならないことが、物理的、時間的につらかったですね。特に当時は多摩センターで働いていたこともあり、木曜日のゼミ(※4)のために1時間以上かけて東大の本郷まで移動することが大変でした。他の授業も同様に、移動して受けなければならなかったのですが、そんな状況を救ってくれたのがiii-online(※5)でした。当時、場所を選ばず、いつでもどこでも大学の授業を受けられ、単位認定されるというシステムは画期的で非常に救われたのですが、実際にそのような新しい学びを体験したことが、その後のベネッセでの自分の仕事で生かされたことも大きな収穫でした。

また、つらい時期という意味では、修士2年の冬が一番つらかったですね。私の業界の特性上、11月から1月にかけてはかなり忙しい時期なのですが、ちょうどその時期は修士論文を書いて提出しなければならない時期でした。当時の社会人として同期だった八重樫さん(※6)とともに休日や年末年始に一日中学校にこもって進捗を図る、バーチャル合宿を開催するなどして、なんとか修士論文を書き上げました。研究室では今まで提出に間に合わなかった論文はないという「伝説」を聞いていたので、自分が不名誉第1号にならないように必死で書き上げました(笑)


◯山内研や学府の学生にアドバイスやメッセージがあればお願いします。

学環・学府は一つの学問を究めるだけでなく、例えば教育と工学といったような複数の領域の学問を究めたい人にとって、非常に適した学びの場になることは間違いないと思います。
是非、そのような環境で、自分にとって良いと思える研究・研究者に出会ってもらえたらと思います。
私は特に、水越敏行先生の「発見学習の研究」に出会えたことが印象に残っています。当時の自分の教育観に刺激を与えたと言う点で、水越先生の研究は非常に印象に残っていて、今の自分の活動やビジネスにも生かされています。
例えば、先日立命館大学にて集中講義の講師をさせていただきましたが、そこでのカリキュラムや授業内容を設計する際、今では当たり前になってきていますが、一方的に話すのではなく、学生たち自身に問題を発見させて解決策を考えていくといった、学びがどんどん広がっていくような授業になるように心がけました。

また、山内研を通じて山内研に関わる様々な方々と出会って刺激を受けてもらえたらと思います。
私自身、学府で出会った仲間や、お世話になった先生方と過ごした濃密な2年間が、非常に良い経験となって今の自分に生かされています。今振り返っても、自分が選んだ道は正解だったなと思えるので、是非そのような学生生活を送って下さい。


(※1:ベルリッツ・ジャパン株式会社 http://www.berlitz.co.jp/)
(※2:株式会社ベネッセスタイルケア http://www.benesse-style-care.co.jp/)
(※3:電気自動車普及協議会 APEV https://www.apev.jp/)
(※4:山内研で毎週木曜日15:00~18:00に行われる研究進捗発表のためのゼミ)
(※5:2002年4月に開始された学際情報学府の授業をインターネット上で受講できるeラーニングサイト
http://www.iii.u-tokyo.ac.jp/course.php?id=41)
(※6:第4回インタビューにもご登場いただいた、立命館大学准教授の八重樫文先生)

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今回、インタビューをさせていただいて、椎木さんの社会人としての修士生活がどれだけ充実していたか、また、それがその後の椎木さんご自身の人生に生きているかが非常に伝わってきました。
僕自身も、まだまだ修士としての学生生活が続きますが、「時間」と「出会い」を大切にして、自分の興味に対して感受性を高めながら過ごして行きたいと思いました。

椎木さん、お忙しい中インタビューにご協力いただき、ありがとうございました。

青木 智寛

2013.09.05

【突撃OB・OGインタビュー】八重樫 文さん(立命館大学経営学部 准教授)

みなさま ごきげんよう.修士2年の早川克美です.
厳しい残暑がつづいていますが,ふと空を見上げるとその高さに,名残の夏を惜しむ気持ちとなる...そんな今日このごろ,いかがお過ごしですか?
さて,第4回めとなる山内研OBの方へのインタビュー,
立命館大学経営学部 准教授 八重樫 文(やえがし かざる)さんにご登場いただきます.

八重樫さんと私は,大学が同じ武蔵野美術大学.なんと大学では私が先輩にあたり(笑),そしてもちろん山内研では,私の修士研究で大変おせわになっている大先輩という不思議な御縁.
繊細で骨太,そして何よりしなやかな思考をされる八重樫先輩,あらためてインタビューするのは初めてのことで,どんなお話が伺えるのでしょうか?
ケンブリッジでの学会に渡英する直前の先輩に直撃しました.


yaegashi.jpg
学生さんが作られた八重樫ゼミのイメージ(笑)


◯現在のご所属と,そこでの活動について教えて下さい

立命館大学経営学部で、
デザインマネジメントに関する研究・教育を行っています。

最近の研究としては、
「デザイン・ドリブン・イノベーション(Design-Driven Innovation)」
をテーマに掲げています。
これまでのイノベーション研究分野では、
テクノロジー・プッシュ(Technology-Push)と
マーケット・プル(Market-Pull)という2つの戦略に
焦点が当てられてきましたが、僕はさらにそこで、
デザインがイノベーションを主導する
「デザイン・ドリブン・イノベーション(Design-Driven Innovation)」
という戦略に注目し、研究を進めています。
詳細はこちら。
http://www.amazon.co.jp/dp/4496048795


◯研究を発展させていく上での企みといいますか,戦略をお持ちのように感じます.

研究テーマやフィールドは移り変わっていますが、
僕の根本にあるのは、
「デザインの知見を、まだあまりデザインの考え方が
浸透していない分野に持ち込んでその有用性を示すこと」
というミッションです。
さまざまな分野における研究対象や事象を、
「デザイン」という観点から照射し捉え直していきたいと思っています。


◯教育についてはどのようなお考えで携わられていらっしゃいますか?

教育に関しては、自分が人から「教わる」のが好きでないので、
教えない授業づくりを進めています。
もちろんそれは、学生たちに何の学びも提供しない職務放棄ではありません。
「教えられること」だけが「学ぶこと」ではなく、
学びにはもっといろいろなかたちがあると思い、
いろいろな学びがある大学・授業にしていきたいと思っています。


◯なぜ研究者になろうと思われたのでしょうか?

何かひとつの固定した概念範囲に収まりたくないヘソまがりなので、
○○になりたい、と思ったことはありません。
「研究者」についても同様です。

ただ、辞書を繰ってふむふむ納得している側ではなく、
辞書を新しく書き換える側にいたいなと思っています。


◯キャリアを築く上で大変だったことはありますか?
八重樫さんにはこの質問は必要ないかと思われますが
むしろ,それだからこそ,お聞きしてみたいと思いました.

先にもこたえたように、自分が人から「教わる」のが好きでないので、
何かを習得し、辿り着くのにいつもとても時間がかかります。
たぶん一般には無駄と言われるたくさんのことに悩んでいます。
でもそこをズルしてごまかせないので、しようがないと割り切っています。
そんな無駄な悩みの蓄積がキャリアをつくっていくんじゃないでしょうか。


◯研究者としてのこだわりがあれば教えて下さい
研究者としての信条,ここは譲れない...など
ご自身のモットーをお聞かせいただけたらと思います.

「すでにあること・これまであったこと」の認識・解釈ではなく、
「これからあるべきこと」の探求をしていきたいと思っています。

このコンセプトで、今年度から、
立命館大学デザイン科学研究センターをつくりました。
http://design-science.jp/


◯こだわりの仕事道具などがあればご紹介ください.

こだわりの仕事道具はありません。
常に身軽でありたいと思っています。
筆を選ばずその辺にある適当なもので、何でもつくってしまうのが
かっこいいなと。


◯大学院での研究テーマについておしえてください.
研究の動機や苦労したことなどをお聞かせ願えればと思います.

「情報教育におけるデザイン概念の有用性に関する研究」
http://kazaru.jp/theme/mthesis/mthesis_yaegashi.pdf
当時、教科「情報」が高校で必修化されたところで、
Webサイトをつくる、取材して映像や紙媒体にまとめる、など
そこではデザイン活動に合致・類似するねらいが多く示されました。
しかし、デザイン教育やデザインの知見はほとんど
検討されていなかったので、デザインの知見から情報教育への示唆の
可能性を探りました。
具体的には、当時発刊されていた情報の教科書の記述内容を分析し、
そこにデザインの知見がどう活かされるのかの検討を行いました。

研究の動機は明確にあったのですが、
それをどのような方法で明らかにするのかに苦労しました。


◯大学院時代,山内研究室で得られたものは何だったのでしょう?
社会人院生としてどのように山内研メンバーとして過ごされたのか.
山内研で得られたことがその後,どのように役立っているのか?

これは明確におこたえできます。
「修士論文」という成果物です。

もちろん、その執筆・研究プロセスにおける、
ゼミでの活動、先輩・後輩とのつながり、他の研究者とのネットワークなど
現在に活きていることはいっぱいありますが、それは付帯的なもので、
「論文」という成果が得られなければ、それらはすべて今につながっていない
と思っています。

だから僕は、「修士論文を書き上げる」ということだけを
最優先かつ唯一のミッションとして、山内研メンバーとして過ごしました。


◯最後に研究する上でのアドバイスを後輩にお願いします.
これは私を含め(笑)現役山内研院生にむけてお話いただけたらと思います.

何でもよいのですが、自分の掲げるミッションを大事にしてもらいたいと思います。
研究内容にも研究生活にも、そのミッションをしっかり浸透させてください。

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私は八重樫さんの辞書には「苦労」という言葉は存在しない,そう思っていました.
「何かを習得し、辿り着くのにいつもとても時間がかかります。
たぶん一般には無駄と言われるたくさんのことに悩んでいます。」
あぁ,外には決して見せないところで多くの時間をかけていらっしゃることを知り,八重樫さんの生きる美学にふれられた気がいたします.
そして最後の言葉,「自分の掲げるミッションを大事に...」は,今の私自身に厳しくも温かく響くものでありました.
八重樫さん,お忙しい中,インタビューに応じてくださり,ありがとうございました.
修士2年のこの時期に,尊敬する先輩のお話が伺えた幸運に感謝いたします.

残暑はしばらく続きますが,みなさまにはくれぐれもご自愛くださいませ.
実りの秋はもうすぐそこです.

拙文におつきあいいただきありがとうございました.

早川 克美

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