2013.12.21

【参考になった研究の方法論】人の「こころ」を研究するために


こんにちは、D3のふしきだです。きりりとした寒さが身に染みる季節になりましたね。
「参考になった研究の方法論」シリーズも、いよいよ今回が最後です。


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そもそも、研究の方法論には、何がどこまで含まれるのでしょう?
研究とひと口に言っても、学問領域によって捉え方は異なり、実際に研究者の方々がとられるアプローチも多岐にわたるはずです。
そんな迷いを常に抱えながら研究に取り組んできたこれまでを思い出しつつ、常に手元に置いておきたい5冊の本を紹介したいと思います。


---実験をデザインできることの大切さ---

わたしが初めて研究というものに触れたのは、学部2年生の後期だったように思います。認知心理学と社会心理学の大学院生に手取り足取り教えていただきながら、実験をグループで行い、個人でレポートを毎週書いていた記憶があります。そのため、「実験を計画・実施して、分析の結果に解釈を加える」という一連の流れが研究で、実験のデザインをいかに上手に組めるかがすべてを決めるのだと感じていました。

そして、その頃に繰り返し読んでいたのが、『心理学研究法-心を見つめる科学のまなざし(※1)』です。「ものごとを直感ではなく科学的に理解するためにはどうしたらよいのか」という視点から、実験法、調査法、観察法、検査法、面接法の基本的な考え方や手順が紹介されています。

当時、とても印象に残っているのは、実証的研究は「準備、発案、研究計画の立案、実施、研究の分析、報告」という6段階に分けられることや、実験法ではいかに変数の操作・測定・統制が重要になってくるのかといった、心理学研究法の土台の部分でした。人を対象に研究したいと考えている方には、最初におすすめしたい入門書です。


---初めて調査をするあなたに---

その後、色彩心理学の実験をテーマに卒業論文を書き上げた後、大学院に進学して痛感したのは、実験法と調査法では、気をつけなければいけないポイントやタイミングが異なるということでした。明らかにしたい事象について、それを構成する概念を設定し、測定可能な変数に落とし込むという手続きは、どちらの方法にも共通していました。けれども、実験法のベースにある変数の操作ができない調査法では、事象を検討する上で思いつく限りの変数を測定する必要があることを、うまく呑み込めずにいました。

そんなとき、とてもお世話になっていた先生が紹介してくださったのが、『心理学研究法入門―調査・実験から実践まで(※2)』でした。この本は題名からもわかるように、心理学の研究法を基礎から理解できるという点では、※1と重なる部分が多々あります。ただし、前半に質的調査および量的調査の特質やアプローチがていねいに解説されているという点では、わたしの調査法に対する戸惑いをひとつずつほぐしてくれる良書でした。

その後、修士研究では質問紙調査を行うことになり手にとったのが、『質問紙調査の手順(※3)』です。構成概念、尺度、項目といった質問紙に関する用語の整理にはじまり、先行研究の中から導出された問題に対して、適切な目的を設定し仮説を示した上で、尺度を作成することの大切さが語られているなど、質問紙調査の手順を時間軸に沿って理解することができます。加えて、調査を依頼・実施する際の注意点や、回収したデータの入力および分析方法に至るまで、初めて調査をする人にもわかりやすく手順が示されていますので、ぜひ参考にしてみてください。


---実験や調査によって得られたデータの活かし方---

先行研究をレビューして問題をみつけ、それを解決するために目的を掲げて適切な方法を選ぶとき、その方法にはデータの取り方と活かし方の2つが含まれると思います。先に言及した実験や調査がデータの取り方に含まれるならば、データの活かし方のひとつとして統計学があげられるのではないでしょうか。

卒業論文および修士論文、そして今取り組んでいる博士論文では、基本的にはデータの分析は統計学を用いてきました。わたしの場合、学部の頃はt検定や分散分析ができれば特に問題はなかったため、大学院に入ってから相関分析や回帰分析、多変量解析などを学ぶ必要性が出てきたとき、初めは頭の中を?が渦巻いていました。その理由のひとつは、学部時代に苦手な統計学をおろそかにしていたからなのですが、もうひとつの致命的な理由としては、推測統計学の考え方が曖昧だったことにあると今になって思います。

そんな統計音痴のわたしを救ってくれたのが、『心理・教育統計法特論(※4)』でした。この本は放送大学のテキストなので、オープンコースウェアで公開されている音声講義を聴きながら、全15回で統計を道具として使いこなすための準備を終えることができます。標本データの結果から全体の母集団の傾向を推測するという基本的な考え方や、これまでの統計学の経緯を理解した上で、目的に対応した分析方法をひとつずつ学ぶ際にとても役に立つと思います。


長くなりましたが、最後にもう1つだけ。

『創造的論文の書き方(※5)』は、博士論文に取り組んでいるわたしの机の上に、常に置いてある1冊です。ひとつの研究が終わり、知見を世の中に公開するときは、報告書にしろ論文にしろ、文章として形を残すことになります。そのときに、どうすれば自分が研究に感じた思いをそのままの強さで伝えることができるか、いつも頭を悩ませます。

答えは当分見つかりそうにありませんが、「創造的論文とは、・・・いい研究がいい文章で書かれたもののことである」という1文を励みに、博士論文を書き上げたいと思っています。


---引用文献---

※1 高野陽太郎・岡隆(編) (2004) 心理学研究法-心を見つめる科学のまなざし. 有斐閣,
東京
※2 南風原朝和・市川伸一・下山晴彦(編) (2001) 心理学研究法入門-調査・実験から実践
まで-. 東京大学出版会, 東京
※3 小塩真司・西口利文(編) (2007) 質問紙調査の手順. ナカニシヤ出版, 京都
※4 福田周・卯月研次(編) (2009) 心理・教育統計法特論. 放送大学教育振興会, 東京
※5 伊丹敬之 (2001) 創造的論文の書き方. 有斐閣, 東京


伏木田稚子

2013.12.12

【参考になった研究の方法論】方法論を学ぶための文献の読み方

こんにちは。博士課程の安斎です。山内研究室のブログは、だいたい2ヶ月ほどの周期で、同じテーマでそれぞれの大学院生がリレー方式で更新しています。今回のテーマは「参考になった研究の方法論」ということで、各々が参照してきた書籍や論文が紹介されています。是非、過去ログをさかのぼって読んでみてください。

安斎がこれまで参考にしてきた研究の方法論は数えきれません。直接的に自分の研究に活用できなくとも、良い論文をじっくり読めば、「こういう方法もあるのか」「この方法でいつかこういう論文を書いてみたい」などと、いろいろな面で参考になります。他方で、闇雲に文献を読んでいても、「面白い方法だけど、妥当性はどうなんだろう?」「使ってみたいけど、どんな時に使えばいいんだろう?」などと迷ってしまい、自分の研究の血肉にできないこともあります。

そんな経験を振り返ってみて、方法論を参考にレビューする際に、覚えておくといいかもしれないことを2つご紹介したいと思います。


(1)受賞論文を読む

まずおすすめなのは、自分の研究テーマに関連する学会の過去の受賞論文を読むことです。これは修士課程の頃に先輩の森さんからアドバイスいただいたことで、それ以来、時間をみつけて実践しています。

たとえば日本教育工学会の受賞論文一覧はこちらで参照することができます。方法論にも潮流があることがなんとなく見えてきますし、たとえば少し古い授業研究などであっても、そのままワークショップの領域に転用できそうなものもいくつかあります。

また、メインの所属学会に限らず、近接領域や関連学会の論文もとても参考になります。方法論の妥当性は学会によって異なります。例えば日本認知科学会の受賞論文を読んでみると、内容も面白いのですが、「ここまで細かく分析するのか」と思うものもあれば、「この方法は教育工学会には適応できないかも」と感じるものもあります。他の領域をみることで、かえって自分が依拠すべき妥当性の境界が相対化されて見えてきます。


(2)なぜ別の方法を使わなかったのかを考える

他の研究者の論文を読む際に大事だなあと思うのは、その論文で使われている方法論そのものを真似することではなく、「なぜ他の方法を使わなかったのか」という理由を探ることのように思います。

たとえ受賞論文で使われている方法あっても、その背後には試行錯誤の過程があり、無数の「不採用」となった方法があるはずです。そこに書かれている方法をただ鵜呑みにするのではなく、「なぜインタビュー調査ではなく思考発話法なのか?」「なぜ比較対象を設けながら、統制群という言葉を使っていないのか?」などなど掘り下げていくと、その方法の「使いどころ」も同時に見えてきます。そういった分析をするだけでも発見がありますし、チャンスがあれば著者に直接尋ねてみてもいいかもしれません。


以上、僕もまだまだ実践しきれていないことばかりで、偉そうに書きながら変な汗が出てきました。大学院生活も残り3ヶ月、頑張って博士論文を仕上げたいと思います。

[安斎 勇樹]

2013.12.06

【参考になった研究の方法論】フォーカス・グループ・インタビュー

みなさま、こんにちは。
M1の中村絵里です。

キャンパスの銀杏の黄色い絨毯と、青空に向かって伸びる銀杏の樹が、息をのむほど美しいこの頃です。地面を見たり、天を見上げたりと、この季節は赤べこのように下から上へと眺めながらキャンパスを散歩しています。授業と研究のほかに、また一つキャンパスに来る楽しみが増えて、遠路はるばるやってくる甲斐があるというものです。

【参考になった研究の方法論】第6回目は、インタビューの技法についてお届けします。

インタビューというと、みなさま、どんな場面を想像しますか。

著名人が、マイクとカメラを前に語るという姿が思い浮かぶ方もいるでしょうし、企業などのトップマネジメントが、経営方針等についてインタビュアーを前に身振り手振りを交えて語る姿、あるいは、TVニュースなどでよく見られるような街頭で一般の人を対象にインタビューする場面をイメージする方もいるかもしれません。実のところ、インタビューは、前述した事例のようなビジネスやマーケティングシーンで活用されるだけでなく、探索的な研究をする際に重要となる質的データを得るための手法としても取り入れられています。

私自身の研究では、実践の評価のためのデータを、個人およびグループを対象としたインタビューから取りたいと考えています。そこで、今回は、主にフォーカス・グループ・インタビューの技法について、以下の書籍を参照しました。


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『グループ・インタビューの技法』
S・ヴォーン, J・S・シューム,J・シナグブ 著
井下 理 監訳,田部井 潤・柴原 宣幸 訳
慶応義塾大学出版会 1999年
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フォーカス・グループ・インタビューとは、リラックスした雰囲気の中で、特定のトピックについてグループで討議し、非常に幅の広い、より包括的なデータを得る手法だと定義されています。同グループ・インタビューには、以下のような実用性が含まれます。

1.相乗効果性(グループでの相互作用を通して、より広範なまとまったデータが現れる)
2.雪だるま性(ある反応者の発言が、さらなる発言へと連鎖的反応を引き起こす)
3.刺激性(グループでの議論そのものが話題についての刺激を産み出す)
4.安心感(グループが安らぎをもたらし、率直な反応を促進する)
5.自発性(参加者は全ての質問に答えるよう要求されているわけではないので、彼らの反応はより自発的で純粋である)


これらの実用性を私の研究に照らし合わせてみると、個人を対象としたインタビューだけでは得られないであろう集団ならではの意見の広がりが、期待できます。研究の具体的な対象はまだ確定していませんが、可能な限り、アジアの途上国において教育アクセスが困難なコミュニティに焦点を当てる予定です。その国内において、異なる場所に存在する2つ以上の実践コミュニティ(Community of Practice: COP) をつなぎ、相互に情報流通させることが、それぞれのCOPに対して、どのような影響をもたらすかということを明らかにしたいと考えています。フォーカス・グループ・インタビューの特性を最大限に活かして、COPへのインタビューを試みたいと思います。

この本の中では、フォーカス・グループ・インタビューの教育・心理学研究への応用、参加者の選定、司会の役割、データ分析といったインタビューの準備から実施、終了後のデータ分析に至る一連の流れが紹介されていますので、今後、具体的に研究が進む中で、度々参照することになるかと思います。

以上、インタビューを研究における有益なデータ取得法と捉えて『グループ・インタビューの技法』を紹介しましたが、研究のみならず日常生活においても、人の話を聞くという基本的なコミュニケーションの一つとして、インタビューの技法は身につけておきたいものです。そこで、参考になったのは以下の書籍です。


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『インタビューの教科書』
原 正紀 著
同友館 2010年
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こちらの本には、主に一対一の個人インタビューに関する心得が綴られています。インタビュアーとして留意すべき点や、相手のレスポンスに応じた切り返し方や話の掘り下げ方など、プロのインタビュアーでなくても、日常的な場面で役立ちそうなコミュニケーション能力を養うためのヒントが満載です。

さて、この先あと1年間で、どんなインタビューを設定できるかまだわかりませんが、ご紹介した2冊をときどき読み返しながら、質の高いデータを収集できるように努めたいと思います。

【中村絵里】

2013.12.01

【参考になった研究の方法論】"仮説検証型"の研究と、"明らかにする"研究

みなさんこんにちは。早いものでもう師走。
本郷キャンパスでは銀杏がとってもきれいです。


【参考になった研究の方法論】第5回目は私、修士1年の池田めぐみがお送り致します。前回の青木君と同様、研究内容が完全に決まっていない私には研究法の候補も2つ存在します。そこで今回は、その2つの研究方法について紹介したいと思います。


1.安斎勇樹, 森玲奈, 山内祐平(2011)創発的コラボレーションを促すワークショップデザイン(教育実践研究論文). 日本教育工学会論文誌, 35(2):135-145

この研究は、研究室の先輩であり私のファシリテーター(山内研におけるメンターのようなシステムです)である安斎さんの研究で、創発的コラボレーションを促すプログラムをデザインし実践を行った、仮説検証型の準実験研究です。


論文に記載されている安斎さんの研究目的は‥
「ワークショップにおいて創発的コラボレーションを促すためのプログラムデザインの指針を示すことを目指す」こと
具体的には「先行研究を参考にしながらデザイン原則を仮説として設定し,ワークショップ実践とと分析を通してその効果の検討を行う.そしてその結果から,創発的コラボレーションを促すために有効なプログラムのデザイン原則を提案すること」だそうです。

この論文においてとられている研究の方法は以下の通りです。
①デザイン原則の仮説立て
②プログラム概要の決定
③ワークショップにおける制作課題の条件設定
④計8回にわたる実践(うち、実験群、統制群4回ずつ)
⑤ワークショップ中のビデオカメラ、ICレコーダーのデータから、発話データのコーディングを行う
⑥コーディングカテゴリのうち5つを取り出し、分析を行い、コラボレーション展開図を作成
⑦先行研究を元に作った定義にあわせて、創発的コラボレーションがおきていたか、コラボレーション展開図上で判定


安斎さんは実践を計8回101人対象に行い、発話内容をを丁寧に分析しています。
仮説を立て、実践するとなると、ついつい仮説を立てることにばかり熱中してしまいそうになりますが、このデザインによりこの効果が生じたということを論じるためには、実践に参加した人の数や分析も重要になることがうかがえます。


2.我妻優美, 中原淳(2011)大学生の学習観変容に影響を及ぼす協調学習経験 : 映像作品制作を目的とした大学授業における事例研究. 日本教育工学会論文誌, 35(Suppl.):57-60

こちらは、お隣の中原先生の研究室の修了生、我妻さんの研究で、学習者の学習観の変容に影響を与える協調学習経験の特長を明らかにする研究です。我妻さんは大学2年生向けの4月〜7月(計7回)の授業を対象に、観察調査と事前事後の質問紙調査から学習観が変化した学生の特定と、それに影響を与えた協調学習経験を明らかにするということを行っています。


論文に記載されている我妻さんの研究目的は‥
「高等教育における協調学習を取り入れた授業において,学習者の学習観の変容に影響を与える協調学習経験の特長をあきらかにすること」であり、
「大学で協調学習を取り入れた授業の単一事例を対象とした調査を行い,学習観が変容した学習者を同定し,その学習者に特徴的な協調学習経験を明らかに」しています。

この論文においてとられている研究の方法は以下の通りです。
①先行研究を参考にしながら質問紙の作成
②授業期間前における比喩生成課題を用いた質問紙調査
③授業中における参与観察
ビデオカメラ、ICレコーダーでの授業の記録とフィールドノーツの作成
④授業期間後における比喩生成課題を用いた質問紙調査
⑤比喩生成課題の回答をを分析し、学習観がが変容した学習者を同定
⑥学習観の変容が見られた学生の協調学習経験の特長を明らかにするために、変容がが見られた学習者と、見られなかった学習者の経験を比較しながら、フィールドノーツを質的分析


我妻さんは、学習観が変化した学生を質問紙から同定し、その学習者に特徴的な協調学習経験は何であったかをフィールドノーツから分析しています。
調査することを漁業にとらえるならば、調べる手段は網であり、あきらかにしたいことは獲物だと言えます。何を獲物とするかによって網をきちんと使い分けること、獲物を捕まえるために網をしっかり考えて用意することが重要であることがうかがえます。

ーーーーーーーーーー
ある目的に対し、効果をを生むであろうインフォーマルラーニングのデザインの仮説を立て、実践するのか、あるいは、既存の活動において、未だわかっていないことを明らかにするのか迷える所です。
自分がこだわりたいポイントを整理しながら、先行研究をレビューしながら、自分のやりたいことにあったスタイルを、早い所決めなきゃですね。Macが冷たい季節になってきましたが、面白い研究ができるよう、頑張っていきたいと思います。

池田めぐみ

2013.11.22

【参考になった研究の方法論】学習支援システム開発型研究について

 みなさんこんにちは。山内研修士1年の青木智寛です。
 早いもので今年も残すところあと1ヶ月...
 修士課程も1/4を過ぎて自分はどれだけ成長したのだろうかと自問自答する毎日です。

 さて、第4回となった今回のブログテーマ「参考になった研究法」ですが、研究内容が完全に決まっていない修士1年である自分にとっては、「参考になった研究法」というよりも、「参考にしていきたい研究法」というテーマのほうがふさわしいかもしれません。さらに言えば、研究の各段階における手法、たとえば開発方法や分析手法などではなく、まずは「研究プロセス」として大きく捉えて紹介してみたいと思います。

 僕は、最終的に学習を促進させる人工物として、システム開発をおこなう研究を進めていきたいと考えているので、基本的な研究のプロセスとしては
支援原理の設定→学習支援システム開発→実践→評価→考察
といった流れで進めていきたいと考えています。(と、いうよりも進めている最中です)そこで今回、システム開発を行い、実践し、評価した論文として、
「八重樫文,望月俊男,加藤浩,西森年寿,永盛祐介,藤田忍(2007) デザイン境域の特徴を取り入れたプロジェクト学習支援機能の設計,日本教育工学会論文誌,31(Suppl.), 193-196」
をご紹介させていただこうと思います。この論文ではプロジェクト型学習におけるグループウェアの機能について検討し、実際にシステム開発を行い、実践し、その結果分析までおこなっています。

 論の構成は、上で挙げた大まかな研究のプロセスにほぼ沿った形で展開しています。
<1章>
問題解決型学習・プロジェクト型学習における現状の問題点を整理し、分散型環境におけるグループ学習活動が円滑に進んでいないことを述べています。
<2章>
その問題を解決するために取り入れた特徴的な支援原理、"デザイン教育"における"工房・スタジオ的学習環境"の特徴が説明されています。
<3章>
2章の原理を実際にどのような形でシステムに実装したかが述べられ、携帯電話のどの画面にどのような内容が表示されるか、またデータ管理の仕組みなどが表も用いて、詳しく述べられています。
<4章>
授業実践の様子と評価方法が述べられ、実践を行った授業の期間や形態と、質問紙による評価の尺度や、有効回答数などが説明されています。
<5章>結果と考察として、質問紙で調査した項目を統計処理した結果が示され(5件法、マンホイットニーのU検定)、その理由についても述べています。
<6章>
まとめと今後の課題として、考察で説明しきれなかった部分を中心に今後の指針を示して、締めくくられています。

 実際に研究を進めていくに従って、やるべき課題は時期と進捗状況によって異なってきますが、大まかな指針としては以上で示したような研究の流れに沿って進めていきたいと考えています。ただ、ボトムアップ型に進めることだけが全てではないことも念頭に入れて、スタックしてしまった時は先生・先輩方との相談の結果も受け入れながら検討していきたいと考えています。

青木智寛

2013.11.14

【参考になった研究の方法論】質問紙法について

みなさまごきげんよう、修士2年の早川克美です。
11月も半ばとなり、なかなか追い詰められた心境の今日このごろです。苦笑。

私の研究は「ラーニングコモンズにおける大学生の学習実態についての探索的研究」というものです。リサーチクエスチョン(RQ)は「ラーニングコモンズでどのように学習が起こっているのか」。学習とは行動によって引き起こされる変化であるとして、大学生のラーニングコモンズ内での学習でどのような変化が得られたかを調査によってあきらかにすることを目的としています。大学生の学習成果とラーニングコモンズの関係について、大学生の主観的な自己報告から考察するために、調査方法は、質問紙法を用いることとしました。

今回のブログのテーマ【参考になった研究の方法論】質問紙をこの研究で初めて作成することになった私が参考にした書籍をご紹介します。
鎌原 雅彦著(1998)心理学マニュアル 質問紙法,北大路書房

この本は3部構成となっており、第1部では質問紙の作成と実施の方法や基礎知識の解説、第2部は具体的な課題を提示した実習、第3部では質問紙法の研究例が収められています。

RQ〜構成概念〜下位概念と、私は質問紙の骨格をつくるまで、非常に苦労しました。また、そこから質問項目を作成する段階になると、つい、余計な質問を入れてしまい、RQに立ち戻っては削除し、組み直す...という作業を繰り返す始末でした。
この本に書かれていた「初学者が考えるほど容易なものではない」状況を味わいながら、何とか完成させることができました。

これから質問紙調査に取り組む方には、そのスタートラインとして一読されることをおすすめします。

その他にも、小塩 真司著(2007) 質問紙調査の手順 (心理学基礎演習), ナカニシヤ出版
も参考にしました。

私はこれからデータと向き合い、RQを明らかにする段階へと向かいます。
勤務先の大学で教材開発を担当しており、教科書を一冊書き上げたところ、やっと修士研究に専念できるようになりました。山内先生、研究室のみなさんに支えられてここまで来られたことに感謝し、ご恩に報いるためにも誠実な論文を書きたいと決意を新たにしております。

急に冬が到来したかのような寒い日がつづきますが
みなさまにはくれぐれもご自愛くださいませ。

早川 克美

2013.11.06

【参考になった研究の方法論】表現の自覚性を獲得するために

こんにちは.M2の吉川遼です.
参考になった研究の方法論,第2回をお送りします.

研究の方法論,ということで今回は実験デザインで参考にさせていただいている論文である,
石黒千晶, 岡田猛 (2013) 初心者の写真創作における"表現の自覚性"獲得過程の検討:他者作品模倣による影響に着目して. 認知科学, 20(1), 90-111.
をご紹介させていただきます.

こちらは,芸術分野における創作初心者が,どのようにして表現の自覚性--内的イメージとその実現方法の一致を意図すること--を獲得していくのか,その過程に関する実証的な研究です.
具体的には,2名の写真創作初心者を創作のみを繰り返すケース(内省),創作と著名な写真家の撮影技法の模倣を繰り返すケース(内省+模倣)に分け,数ヶ月間の創作活動を通し,各人の表現内容や"表現の自覚性"獲得などにどう影響を及ぼすのかを追い,ケーススタディとしてその分析の結果をまとめています.

模倣行為が創造に及ぼす効果について今まで研究を重ねている東京大学大学院教育学研究科・情報学環の岡田猛先生や研究室の石橋健太郎さんらの論文にも掲載されていますが,この石黒さんの研究における実験デザインは

プレ(創作+インタビュー)

模倣①(写真家A鑑賞+模倣(3日間)+インタビュー)

ポスト①(創作(7日間)+インタビュー)

模倣②(写真家B鑑賞+模倣(3日間)+インタビュー)

ポスト②(創作(7日間)+インタビュー+比較)

模倣③(写真家C鑑賞+模倣(3日間)+インタビュー)

ポスト③(創作(7日間)+インタビュー)

のような形でケーススタディをおこなっています.
僕がこのデザインで優れていると思ったのは,ある単一の熟達者のみを模倣する(引っ張られる)ことのないよう,複数の熟達者を模倣させていること,またその模倣をさせるにあたり模倣期間と創作期間を十分に配置している点です.

この研究の結果から,内省+模倣ケースの参加者は,

1. 模倣対象から得た特徴を後の創作で利用していた
2. 模倣対象から見いだした特徴の中には参加者の創作に影響を及ぼすものと及ぼさないものや,影響が見られるのに時間がかかるものがあった

ことが示されました.

音楽表現において,熟達者の楽曲解釈や身体動作の模倣を学習支援に用いたいと考えている僕の研究にとって,この研究の実験デザインは非常に参考になっています.

また実験デザインのみならずその後の分析方法などについても非常に綿密に設計されており,1つ上の先輩である石黒さんが修士の2年間でこれほどの研究をされていた,ということに驚きを覚えつつも,かくありたいという刺激も受けます.

本来主体的能動的な楽曲の解釈・演奏表現が求められる音楽分野において,このように複数の熟達者の表現を取捨選択する行為は,ある種能動性の表れともいえると考えられます.

今後,研究を進めていく上ではこの石黒さんの研究も参考にさせていただきながらも,どうすれば複数の熟達者演奏の差異を視聴覚的に体感し,それを学習に活かすことができるコンテンツ・実験計画を立てていけるかを思案しつつ,広げた風呂敷をしっかりとまとめていきたいと思っています.

吉川遼

2013.10.19

【参考になった研究の方法論】SPSSを使用した統計分析

こんにちは!M2の梶浦美咲です。
もう10月も後半にさしかかり、修論が佳境に入ってきている今日この頃、私は開発したシステムの評価実験を丁度昨日行ったところです。

そしてブログの方は今週から新たなテーマ【参考になった研究の方法論】に切り替わります。
研究方法に関する書籍や、研究方法を参考にしている(したい)論文などをご紹介していきます♪

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まず第1回目は研究方法に関する書籍ということで、IBM SPSS Statisticsを使った統計分析をする際に参考になりそうな本をご紹介しようと思います!

SPSSによるやさしい統計学」(岸学 2012年)です。

実験や調査をしてデータに関係性があるか、差があるかの統計分析をする際に役立つツールがSPSSです。
フリーソフトであるRでも統計分析は可能ですが、SPSSの方が直感的に分かりやすく慣れればとても使いやすいツールだと思います。
しかし慣れないとどのように操作したら良いのか、なかなか分かり辛いと思うのでこのような本を読みながら分析すると良いのではないでしょうか。
私も初めてSPSSに触ったとき、どのようにしたら良いのか分かりませんでした...(笑)

この「SPSSによるやさしい統計学」では多変量解析(共分散構造分析、因子分析、重回帰分析など)を除いた一通りの分析方法が紹介されています。
実際に架空のサンプルデータを使って、データの統計分析の手順である「尺度の確定」⇒「記述統計」⇒「変数の変換」⇒「推測統計」の流れに沿ってSPSSの操作が学べます。ところどころ実際のSPSSの操作画面が出てくるので分かりやすいです。
また、分析する上で出てきた統計学の用語についての解説も説明されているので統計学の勉強にもなります。
ちゃんと各用語を説明する数式まで紹介されています。

一応統計分析の手順を紹介しておきます。

①尺度の確定...各変数を名義尺度、順序尺度、間隔尺度、比尺度に分類する。
②記述統計...データの様子をわかりやすく表現する。度数分布を描く、代表値(平均値、中央値など)を求める、散布度(標準偏差、四分位偏差など)を求めるなどの方法がある。
③変数の変換...必要に応じてデータを変換する。データをもとに対象者をグループ分けする、異なる平均値や標準偏差になっている得点同士を比較する、度数分布の中での位置をとらえやすくするなど。
④推測統計...「関係があるか」「差があるか」の分析をして、標本から母集団の様子を明らかにし、研究を通じて知りたかった仮説や目的に答える。

以上のような手順で分析をしていきます。

また、調査や実験に使用する質問紙を作成する際に考えるべき評定法の程度量表現用語の尺度(すごく、非常に、すこし、あまり、ぜんぜん等)が与える印象に関することも説明されています。個人的には大学生、中学生、小学生など被験者に応じて各用語が与える印象がどのように違うのか、ということまで説明されていて勉強になりましたし、質問紙を作成する際に役立つと思いました。

分析方法の章では、自分のデータに適合する分析方法の選び方もしっかり説明されています。
データ分析は基本的に「関係があるか」の分析と「差があるか」の分析に分類できます。

関係があるかの分析」は、対象者が2つ以上の変数で表される特性をどの程度持っているかを示す分析、
差があるかの分析」は、独立変数(要因)と従属変数があり、独立変数(要因)の値によって従属変数の値がどのように変動するかを示す分析

です。取得したデータの構造に応じて分析方法を選ぶ方法まで紹介されているため、とても役立ちそうです。

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その他、統計を基礎から学ぶのにおすすめなのが早稲田大学人間科学学術院・向後千春研究室が開発したWeb教材、
「ハンバーガー統計学( http://kogolab.chillout.jp/elearn/hamburger/ )」
「アイスクリーム統計学( http://kogolab.chillout.jp/elearn/icecream/index.html )」です。
ハンバーガーショップ、アイスクリーム屋さんにいる、という架空のストーリーに沿って統計学の学習が進んでいきます。
前者ではt検定、分散分析etc.、後者では回帰分析、因子分析etc.が面白く学べます。
書籍版もあるのですが、Excelを使用して学習が進んでいくので、こちらのWebバージョンが使いやすいかと思いました。

また、学部時代に初めて統計学を授業で学んだ際に使用していたのが「ゼロから学ぶ統計解析」(小寺平治 2002年)という本で、
こちらは数式を用いて統計学の専門用語が説明されていて、数式からしっかり統計学を学ぶ場合におすすめできます。
事例に基づいて各分析手法について説明がなされていたため分かりやすかったです。

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私は丁度昨日18日金曜日、開発した講義の聴き方支援システムの評価実験を行ったので、これから実験で得たデータを使って分析を行います。
私の実験は、他者の講義メモ書き込み状況を通知するシステムを使用した実験群・他者の講義メモ書き込み状況を通知しないシステムを使用した統制群の二群で行いました。一要因二水準の被験者間実験でした。
サンプルサイズが10:9でしたのでデータが正規分布に従った際に使用するパラメトリック検定(t検定)は使用せず、正規分布に従う必要のない、ノンパラメトリック検定(マン・ホイットニーのU検定)を使用して両群における有意差検定を行おうと考えています。
どんな結果が出るのかどきどきですが、しっかりデータと向き合いなんとか修論として成果を出したいと思っています!

梶浦美咲

2013.10.13

【突撃!博士課程座談会】池尻良平 × 伏木田稚子 × 安斎勇樹(後編)

こんにちは、D3の伏木田です。
秋が深まってきたと喜んでいたら、夏日に逆戻りの日々ですね。
前回より、安斎勇樹&伏木田稚子(博士課程3年)から「番外編」として、池尻良平さん(東京大学大学院 情報学環 特任助教)との座談会形式でお送りしていますが、今回はその後編になります。

山内研究室OBである池尻さんは「歴史を現代に応用する学習方法の開発」を博士研究テーマに掲げ、特任助教としてさまざまなプロジェクトに取り組みながら、現在博士論文を執筆中です。実は同世代(1985年生まれ)である3人で、大学院生活を振り返りながら研究についてあれこれと語らいました!


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‐やりたいことは朝のうちに

伏木田:助教として研究するのと、博士課程の院生として研究するのと、何か違いはありますか?

池尻:仕事のくる量が違うのは大きいですね。博士課程まではコントロールできていたんだけど、助教になるとガンガン仕事がくるようになったので、コントロールが難しくなってきまして。

安斎:突然くるってこと?

池尻:そう。今日のお昼は余裕があると思って大学に来ても、いっぱいメールがきたり、相談が入ったり、急な仕事が増えるから、確実にこの時間は研究する、っていう時間をつくっておかないといけないですね。仕事が終わった後、例えば夜9:00くらいにカフェに行って、さぁ研究やろうって思ってもしんどい。なので、より朝型になりました。

伏木田:朝は早いんですか?

池尻:早い。大体いつも6:00くらいには起きてます。一応、勤務時間が10:00だから、それまで博論書いたり、自分の研究に関係する本を読んだりとかをやっているけど、1日没頭するのはできなくなってね。博士課程のときに何をやっておけばいいか、っていうことにも関係するけど、Dの頃にがーっと先行研究のレビューをやっていたんですが、今あれを働きながらやるのはしんどいなって思います。

伏木田:すでにできてないです、わたし...。

安斎:同じく(苦笑)。

池尻:だから、海外論文100本レビューとかは、早くやっておいた方がいいよ。

伏木田:池尻さん、いつ頃やってました?

池尻:D2の冬とかじゃない?

安斎:終わっちゃったよ、もう...。

伏木田:時間が戻らない(笑)。


‐仕事と研究を安定して続けていく秘訣

伏木田:モチベーションを保つとか、精神的に安定した状態を保つとか、そういうところでは博士課程の頃も今も変わらないですか?

池尻:うん。僕ね、ストレスあんまり感じないタイプなんだけど、ストレスを感じることは感じます。で、実はうまいこと、ストレスをコントロールする方法があってですね...。

安斎:ほう。

池尻:これをやったら、助教時代もストレスを感じない。博士課程もそれをやっていたから、ストレスを感じなかったっていうのがあって、何かというとですね...。

伏木田:悪徳商法みたい(笑)。

安斎:聞きたい、聞きたい(笑)。

池尻:例えば、刺身7点盛りがあって、僕はホタテが食べたいとします。それで、ホタテを食べたら、僕のストレスはマイナス20%になるわけです。でも、もしアジを食べたら、ストレスがたまる。だから、いかにホタテを食べられる環境にするかが大事なんですよ。

安斎:なるほど。

池尻:例えば、いろんなタスクがあるときは、1ヶ月先のタスクまで全部整理しておいて、今日は本を読みたいなと思ったら本を読みます。今日は博論書きたいなと思ったら書く。淡々と仕事をしたいと思ったらそうする。そうすれば、ほとんどストレスがたまらないんですよ。むしろ、毎回好きなことをやっているから、自己効力感が上がりっぱなしになる。ちゃんと前からタスクを処理しておけば、本を読みたいときに読めるわけだから、ストレスはなくなるはずで、そういう生活をキープするようにしてます。

伏木田:安斎くん、異論は?

安斎:今回は異論ないよ。逆にすごいなって思って。また戦った方がよい?(笑)

伏木田:ふふふ。じゃあ、安斎くんは仕事ともろもろがかぶったときはどうしてるの?

安斎:それが出来ないのが今の悩みです。池尻先生、どうしたらいいですか?

池尻:それは、案件が多いっていうのと、納期が短すぎるんじゃない?

安斎:その通りです。仕事のキャパを、自分のモーターが回転できる最大値に設定しているのはよくないんだよなぁ。コイルは切れないけど、自分で回している感覚がなくなって、ゆとりがなくなる。

池尻:それはよくない、心がすたれていくよ。

安斎:たいていの仕事はおもしろそうだと思ってしまって、つい受けてしまう。

池尻:自分ができると思ってる80%くらいで止めても、100%になるから。7割くらいにしとかんと、自分の研究が枯れちゃうから。それは意識してます。

伏木田:「どや」って言ってる、顔が(笑)。

安斎:どや顔のコメントは基本カットしようか(笑)。で、伏木田さんは?今もピアノ、やってるんでしょ?

伏木田:それがちょっと、今はお休みモードです。でも、去年からヨガをはじめました。背中や肩がごりごりに凝っていて、そのせいで仕事がちゃんとできなくなるのはいやだなぁと思って。

池尻:そんなに凝ってるの?

安斎:肩は凝るでしょ。池尻さん、凝らないんですか?

池尻:凝らない。

安斎:仕事してないんじゃないですか?(笑)

※ ちゃんと仕事はしています。by池尻


‐研究日をつくる?つくらない?

伏木田:最近、自分がフルに使える時間が週に1日か2日になっちゃって、その状況が好きじゃないんです。今日はこれをやりたいなと思っても、やった方がいいこととやりたいことが一致しないので、むしろ、「やった方がいいことをやれば楽しい」って思えるように、気持ちの向け方を変えてみました。

池尻:あぁー。

伏木田: 1日にいくつものタスクを並行でやるのは嫌だから、はじめにやった方がいいことをざっと書き出して、この期間はAの仕事、次の期間はBの仕事というふうに、期間を分けてそれぞれの仕事に割り当ててます。だから、やりたいことが後になるんです。というよりは、仕事と研究が同じ濃度で入ってるんです、スケジュールの中に。

池尻:でもさ、研究日に研究したくないテンションってない?

伏木田:ないです。むしろ、何もしないんです、そういう日は。

池尻:研究日なのに?じゃあ、研究日はどうするの?

伏木田:研究日、ないですもん、わたし。だから、仕事、仕事、何もしない日、仕事、みたいにスケジュールを組んでいて、論文を書くって決めたら、その間に集中して書いて、というふうにしてます。

安斎:俺もそうだわ。

池尻:つくって、研究日!

安斎:D3の告白...「研究日がありません」(笑)

伏木田:例えば、インタビュー調査に行こうと決めたら、2ヶ月前くらいからその準備ができるように予定を組んでおいて、必要最低限の時間を確保しながら別の仕事を詰めるとか、休む日を決めておく。

池尻:それ、大丈夫?(笑) 35歳で新しい研究案、出る?

伏木田:だから、いろいろな研究案を広く持った人と一緒にやらせてほしいなと思っていて。

安斎:一貫はしてるな(笑)。

池尻:なるほどね。

伏木田:うまくいえないんですけど、仕事に向かうのと同じ意気込みで研究に入っていくんです、わたし。

池尻:ほんとう?俺、それは違うわ。

安斎:俺は違わないかも。To doに並列して仕事も研究も並ぶ。どっちも楽しいですけど。

池尻:まじか...。例えばさ、博論が終わって何も制約なかったら、新しい本を1冊書きたいなってある?

伏木田:博論は書きたいけど、本は特に...。今はわからないです。

安斎:僕は書きたいですよ。すぐ論文には出来ないけれど、いま仕事に忙殺されている中で、頭の中でもやもやと言語化できない違和感と仮説が少しずつ生まれてきている。それが博士研究の次の「種」になる気がしているので、それを言葉にする作業に時間を使いたいですね。

伏木田:わたし、修論の頃に戻りたいです。無理にマルチタスクでやらなくてよくて、修論だけやってた頃が、すごく幸せだった。マルチタスクはちょっと...。

池尻:世の中にシングルタスクはほとんどないよ。

安斎:修論のときは、僕ですら外部の仕事は全て断ってたもんね。


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‐自分にとってのいい研究とは

安斎:最後に、いい研究とは何かっていう話をしましょうか。

池尻:先にどうぞ。

伏木田:はい、わたしにとってのいい研究は、人の役に立つ研究、社会的還元性のある研究です。ひとりよがりじゃない研究...?(笑)

池尻:それ、俺のこと?(笑)

伏木田:いえいえ(笑)。ただ、誰かが役に立ててくれるような研究がしたいんです。

安斎:僕も基本的には現場の役に立ちたいと思っているけど、「すぐに役立つノウハウ」を提供したいわけでもないんです。研究者が実践者の思考を停止させてしまっては意味がない。新しい視点を提供しながらも、それまでの考えを揺さぶり、議論と試行錯誤を誘発するような「噛みごたえ」のある深みを持った研究がしたいですね。実践者同士、あるいは実践者と研究者のコミュニケーションメディアになる研究が、いい研究なのかもしれません。ただし、現世の人とね(笑)。

伏木田:誰かが自分の研究を深堀りできたらすごいなって思います。池尻さんは?

池尻さん:いい研究とは何かは、俺ねM1の頃に主張したんやけど、パラダイムシフトを起こす研究がいい研究だと思っているんです。

伏木田:・・・。

池尻:「パラダイム」を、「シフト」...。

安斎:それはわかりますって。伏木田さんはね、「...というと?」っていう顔をしたんですよ(笑)。

池尻:そっか(笑)。いや、俺はね、レイヴの『日常生活の認知』を読んだとき、みんながずっとこうだと考えていたことを批判して、きれいにガラッと変えているのに感動したんですよ。ブレイクダウンする考察でもなく、現世の横のつながりばかりを意識したY=0の研究でもなく、理論に向かって斜めに上がっていくような、喧嘩を売るような研究がいい研究だなと。だから、デューイやレイヴに喧嘩を売るような研究がいい研究だなと思ってて。

安斎・伏木田:・・・。

池尻:今、2人が半笑いと苦笑いをしてますけど...。でも、デューイやレイヴがやり残したこともあるはずだし、それを超えていきたいなっていうか、ライバル意識というか。

伏木田:わかった!池尻さん、すごいガッツありますよね。

池尻・安斎:ガッツ...(笑)。

池尻:その言葉聞いたんウルフルズ以来やわ(笑)。

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安斎:池尻さんは研究ポリシーみたいなものってありますか?

池尻:1つのテーマをずっと掘っていくことです。ふらふらしない。伏木田さんは?

伏木田:ていねいに研究しようと思ってて。しっかりした技法をもって、人と人がコミュニケーションをする場面を研究できるのであれば、それをていねいにやりたい。安斎くんは?

安斎:僕は池尻さんでいう「歴史」みたいに、特にコンテンツにはこだわりはないですね。比較的なんでも楽しめる。今は「ワークショップ」という方法を主軸にしているけれど、それもいずれ変わると思う。

池尻:そうなの?

安斎:最近気がついたのは、僕は「目からうろこが剥がれる瞬間」が好きなんだなと。うろこって、ある程度一つのことに深く打ち込まないと、形成されないじゃないですか。ある程度の深く掘り下げていったあとに、何らかの機会に揺さぶられて、それまでに気がつかなかった外側の世界が新たに拡張される瞬間が好き。いまワークショップという学習形態が好きな理由も同じです。そして、次はワークショップの外側に行きたい。

池尻:3人とも違うね。これから博論を書いてるとわかるかもしれないけど、掘ったと思った穴から領域がどんどん広がっていくんですよ。どろどろしたところを掘っていく快感はすごいよ。だから、これからもっと楽しくなっていくと思うよ。

‐お・ま・け

池尻:このインタビュー、半分くらい記事にしてほしくない...。

伏木田:なんでですか?

池尻:君らの質問がえぐ過ぎる。(※ここには載せられないような質問もされました...笑。by池尻)

安斎・伏木田:あはははは(笑)。


[伏木田 稚子]

2013.10.06

【突撃!博士課程座談会】池尻良平 × 伏木田稚子 × 安斎勇樹(前編)

こんにちは、D3の安斎です。これまで山内研究室のOB・OGの皆さんに対するインタビューシリーズをお届けしてきましたが、最後の2回は安斎勇樹&伏木田稚子(博士課程3年)から「番外編」として、池尻良平さん(東京大学大学院 情報学環 特任助教)との座談会形式でお送りします。

山内研究室OBである池尻さんは「歴史を現代に応用する学習方法の開発」を博士研究テーマに掲げ、特任助教としてさまざまなプロジェクトに取り組みながら、現在博士論文を執筆中です。実は同世代(1985年生まれ)である3人で、大学院生活を振り返りながら研究についてあれこれと語らいました!

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-博士課程に進学を決めた理由

安斎:そういえば、二人はそもそもなんで博士課程に進学したんですか?

池尻:僕はね、もともと小さい頃から「人類を良くしたい」と思ってたんですよ。

伏木田:...(笑)

安斎:伏木田さん、さっそく苦笑い。

池尻:でも、中学生くらいの時に「僕一人では人類は良くできない」と気がついて。だから自分が良い「教師」になって、人類を良くできる後進を育てようと思ったんです。修士課程に進学したのも、最初は自分が教師として使うための教材を開発するためだったんですよ。

安斎:自分もまだ先に進んでないのに、もう後進のことを考えてたんですか(笑)。

池尻:そう(笑)。それでずっと教師を目指してたんだけど、大学院で研究しているうちに、人のために頑張るというより、研究そのものが面白くなってきて。結局「教師になって後身に人類を良くしてもらうのを期待するか」あるいは「研究者になって自分で人類を良くするのか」を天秤にかけた結果、色んな手応えを感じて、後者を信じてみようと思ったんですよね。最初は、親から「まだ学生やるの?」って反対されましたよ。

安斎:周囲からは反対される場合が多いかもしれないですよね。伏木田さんは?

伏木田:私は、大学に入学したときから修士課程までは行くつもりでした。でも修士課程を卒業したら就職してみたいなとも思ってたんですよね。ちゃんとスーツ着て、丸の内で働きたくて(笑)。

池尻:イメージ全然違う(笑)

伏木田:でも、就職してもいつかは博士過程に進学したくなるだろうなとは思っていたんです。そこで親に相談したら、「あなたは就職したあとで受験する馬力はないから、いつか進学したいと思っているのならわたしたちが助けられるうちに早く行きなさい」と奨めてくれたので、甘えさせてもらいました。安斎くんは?

安斎:僕は、修士1年の夏くらいには進学を決めてたかな。大学生の頃から起業をしていたんだけど、その時に「お金を稼ぐこと」と「面白いことを探求すること」の両立がいかに難しいかということを実感したんです。特にまだ実力や専門性がないうちは、つい日銭を稼ぐことに絡めとられてしまう。山内先生や中原先生のような実践的な研究者像にも影響されたし、「面白いことを持続的に探求できる環境」として、博士課程や大学教員は良い選択肢ではないかと思って進学しました。専門性がないまま独立してしまっても、小さくまとまるだろうなと思ったんですよね。人それぞれ、進学の理由が違いますね。


-博士課程の過ごし方

伏木田:博士課程を振り返ってみて、やっててよかったことって何かありますか?

池尻:自己分析をきちんとして、自分が苦手なことにも積極的に取り組んだことは良かったです。山内研究室っていろんな人がいるじゃないですか。実践が得意な人もいれば、システム開発ができる人もいるし、統計に詳しい人もいる。その中で自分の強みは文献レビューを大量にして、自分の実証研究を理論レベルに上げていくところだと思っていて、修士課程の頃は自分の強みをとにかく活かして頑張っていました。けど、博士課程に上がってからは、自分が苦手なことも20%くらいは頑張ってみようと思って色々挑戦してみたんです。ワークショップもやってみたし、統計も勉強したし、ブログも書いてみたり、苦手な英語で国際会議で発表したり、企業の案件も受けたり、研究会の運営もしてみた。苦手なことを得意にするのは無理なんだけど、あえてそういうことにも少しずつ取り組むことで、人のつながりや研究の幅が拡がったと思いますね。

安斎:博士課程から、というのがポイントなのかもしれませんね。修士課程からあれこれ手を広げすぎると専門性が身につかないしね。ところで、池尻さんは博士課程の満足度に点数をつけるとしたら、何点くらい?

池尻:100点!

安斎:1000点満点ですか。

池尻:低すぎるやろ(笑)。100点満点で、うーん、やっぱり90点かな。-10点は、システム開発がやりたかったのに、プログラミングをちゃんと勉強できなかったこと。それは唯一の心残りです。総じて博士課程はすごく楽しく過ごせたし、やりたいことはほぼ全てやったと思います。

伏木田:へ~。私は50点くらいかも...。本当は、もっとゆっくりのんびりしたかった(笑)。もともとあれこれ詰め込んでやるのが得意じゃないのに、今は締め切りに追われてるから...。私は池尻さんの逆で、実践とかも非常勤以外ではしていないし、自分から何かに挑戦するというより、いただいた仕事をちゃんと受け止めて、取り組みたい。あと今不安なのは、これから一人でやっていけるかどうか。もうちょっと社会調査とか勉強しておけばよかったなーというのがあるので、50点です。安斎くんは何点?

安斎:...65点くらいかなぁ。いや、基本的にめちゃくちゃ楽しいですよ。書いた論文や書籍にも満足してるし、最近では企業からも多く仕事を頂けるようになって、やりがいもある。けど、なんだろう、やっぱり大変ですよね。博士2年くらいから仕事が増えすぎてしまって、だんだん論文をじっくり読んだり、集中して研究できる時間が少なくなってきていて、博士課程のうちからこれじゃダメだって思うよね。あと、海外にもちゃんと行きたいですね。


-なぜ大学教員になるのか

伏木田:あ、私もう一つ博士課程に進学した理由があった。一つのところで長く、じっくり、働きたくて。

池尻:僕は真逆だわ。研究者って深い研究アイデアが枯れたら終わりだなと思っているところがあって、できるだけ「研究者」でいたいけど、早ければ10年で終わりだと思っているから。

安斎:映画『風立ちぬ』的な研究者像ですね。もうあと残り5年くらいですね(笑)。

池尻:でも、自分の納得いく研究ができなくなったら、研究者じゃなくて、もともとやりたかった高校教師になるのも良いと思ってますよ。

安斎:そうなんだ!いまはなぜ大学教員として研究するんですか?

池尻:研究の時間を確保できるかどうかだと思う。今は研究に没頭したいから。教師をやりながらはさすがに時間的に難しいし、独立してフリーの研究者になるには生計が成り立たない。バランスを考えたら、大学教員が一番良いんじゃないかな。

安斎:それは僕も思います。僕らは大学教員の仕事である「教育」もフィールドにできるから、生計を立てながら研究がしやすい領域ですよね。

伏木田:私がいいなと思ってるのは、なんか「学者」って響きが好きで。

安斎:え、響き?(笑)

池尻:それ、わかるわ。わかる。わかる。

安斎:めっちゃ共感してる...。

伏木田:それに、ちゃんと頑張って博士研究をして、助教としても研究を続けて、もしいつか大学の教員になれたら、何かテーマを持ってる方々と一緒に新しい研究がやり続けられるかなって。それまでにちゃんと技術を磨いておけばね。

池尻:自分のテーマじゃなくていいの?

伏木田:たぶん私はゼロからアイデアを出すのはあんまり得意じゃないから、そういうことが出来る人と一緒に組んで研究している方が、多分楽しく、気持ちよくできるかなって。

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-面白いアイデアを見つけ、その面白さを伝える工夫をする

池尻:研究者は、本当に自分が好きなことが出来るから良いよね。会社だったら自分のやりたいことを社内で説得できなかったらやれないじゃないですか。研究者は自分の才能一本で勝負が出来るところが、面白い。

安斎:それについては異論がありますね。

伏木田:ふふ(笑)。

安斎:修士研究までは確かに好き勝手に出来るかもしれないけど、大学教員としてやっていくとしたら、大学に就職しなきゃいけないですよね。大学の研究費は年々減らされてるわけですから、資金調達のことも考えれば、それなりに社会に価値を感じてもらえる研究をしていかないといけないじゃないですか。

池尻:え~。いやいやいや、社会って誰?それは現代を生きている人のことでしょ?

安斎:そうですよ。もちろん現場のニーズに迎合する必要はないんだけど、自分の好きなことをやりながらも、現場の人に対してもその面白さをちゃんと伝えられて、資金を調達できるスキルがあったほうが、好きなことが出来るじゃないですか。

池尻:いや、違うね。

伏木田:...ねえ、いっつもお酒飲みながらこんな話してるの?(笑)

安斎:そうだよ、毎回(笑)。

池尻:お酒飲んだらもっとひどいで(笑)。

伏木田:すごーい!(笑)

池尻:...話を戻すけど、そういうアピールをやらなきゃいけないのは、本質的にそもそも選んでる研究テーマがみんなの心に響いてないんですよ。みんなが直観的に「これはすごい」と思える、深くて意味のある研究テーマが設定できていれば、お金はあとからついてくると思う。例えばカントは、本質的にみんなが興味を持つテーマを設定していたから、何百年も参照され続けてますよね。そのくらいを目指して研究テーマを作れば、お金や人はついてくるんじゃないかな。本質的に面白い研究だったら、「営業」にはそんなに力を入れなくても良いと思う。

安斎:それはわかりますよ。僕も周囲の人を惹きつける研究テーマは必要だと思う。つまらない研究をテクニックで演出したって意味がないですよね。けど、池尻さんは今から300年後とかを見据えてるじゃないですか。確かに自分の研究で300年後に価値が残せたら良いなとはもちろん思うけど、僕らはそもそも応用領域の研究者で、現場に関連する研究を求められていますよね。現実的には、現場のステークホルダーを巻き込みながら、実践のリアリティを積極的に理解して、自分の研究の価値をアピールしながら研究テーマを育てていかないと、短・中期的には良い研究ができないんじゃないですか。

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池尻:いや、それはさぁ、ステークホルダーって言い方は非常に現世的な考え方で...。

安斎:「現世」って(笑)。

伏木田:おもしろい、このやり取り(笑)。

池尻:僕は現世のステークホルダーよりも、研究者コミュニティとして、100年前の研究者たちから、100年後の研究者たちにつないでいく研究がしたいんですよ。先人を超えて、次世代に手を伸ばしたいんですよ。

安斎:確かに、そういうカードゲームを作ってましたもんね。僕は、現世の人たちと創発的コラボレーションがしたいのかもしれない(笑)。

伏木田:でも、私は学振に落ちたときに、2つとも大事だと思いましたよ。本質的に面白い研究をしていることと、それがきちんと届く書き方のコツを知っていること。論文を書くときも、科研費をとるときも、常にその2つは走り続けていくことだと思います。池尻さんだって、なんだかんだそういうテクニックも使ってますよね??

池尻:...使ってるね(笑)。でもね、やっぱり、今の自分の研究テーマが実現したら、子どものころに思い描いた「人類を良くする」ことにつながると本気で思ってるんです。たとえ現時点でそれが評価されなくたって、今は気にしない。それで悩んでいても人類は良くならないし、お金が無くたって研究すればいいんだから。もしやっていくうちにみんなに認められて、お金がついてきたらそれはそれで良いんじゃない、っていうくらいの気持ちで研究していますね。

(後編に続く)


[安斎 勇樹]

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