2010.07.29

【研究者の仕事術】中原淳 准教授

皆様こんにちは、博士課程1年の大城です。
身近な研究者の仕事術や研究ノウハウを紹介するシリーズ【研究者の仕事術】最終回は、
中原淳先生(東京大学大学総合教育研究センター准教授)へのインタビューをお送りします。

中原先生は、「『大人の学び』を科学する」をテーマに、企業・組織における人々の成長・コミュニケーション・リーダーシップについて精力的に研究されています。

皆様の中にも、東京大学で開催されているLearning Bar(組織学習・組織人材の最先端の話題をあつかう研究者と実務家のための研究会)をご存じの方、あるいは、先生のご著書(近著『ダイアローグ:対話する組織』『リフレクティブ・マネジャー:一流はつねに内省する』)をお読みになったことのある方もいらっしゃるかと思います。

そこで、最終回は、「働く大人」としての中原先生に迫りたいと思います!



■□■□■ 1.情報収集編 ■□■□■


本:「読む」というよりは「拾いに行く」感じ。

【大城】
普段、どのように読書をしていますか?本・論文の選び方、冊数(本数)、読み方などについて、何かご自身で決めているルールなどはありますか?

【中原先生】
本ですか...。まず、「探す」っていうのがあるよね。僕の場合ブログに登録している研究者が300人ぐらいいるので、その人たちが書評を書いているもの、Twitterで呟いているもの、興味関心があるものは、すぐに全部発注する。そうすると1カ月で何十冊にもなる。その中で、まず目次を見て参考文献を読みますよね。そうするとだいたい筆者が何を言いたいかが分かるじゃん?あとは関係あるところをばーっと読む。だから熟読というよりも、関係のある情報をピックアップするように読む。とにかく時間がないからそんな感じですよね。

僕の場合、「経営」と「学習」を両方見ないといけない。すると本の数がすごく膨大になって、とにかく数をこなさないといけない。なので、前にブログでも書いたけど、全部家に置くんですよ。一番リビングの目立つ場所に置かせてもらうわけ。そうすると、カミさんからソーシャルプレッシャーがかかってくる。「早く読め!」と(笑) どんどん積み上がっていくので、それを1冊ずつ減らしていくという感じかな。そういう読み方だから、「読む」というよりは「拾いに行く」「情報をピックアップする」というのに近いですよね。


論文...3か月に1回は研究キーワードで検索して、片っ端から読む。

【中原先生】
論文の場合はシンプル。本の中で出てくるものを読みますよね。あとは3カ月に1回ぐらい、自分の研究のキーワードで検索する。僕は英文雑誌で読むものを決めているので、その中で検索して、片っ端から読む。中にはサマリーしか読まないものもある。やっぱりみんなそうだと思うんだけど、忙しい中でどうやって自分の知識を高めていくのかって、すごく考えなければならなくて、僕が辿りついたのはそういう読み方。だけど、それには当然弊害もあるよね。文系の先生みたいに熟読しないから浅い読み方になってしまう。


ブログ・Twitter...「目利き」の情報を読む。

【大城】
新聞、テレビ、インターネット上の情報収集(ブログ、Twitter)についてはどのように行っていますか?

【中原先生】
まず新聞は、デジタルでしか読まない。見出しだけ読んで関心があれば深く読むけど。テレビはほとんど見ないに近いかな。ニュースぐらいは見るけど。ブログは、本当に見出しだけ、Google Readerで電車の中で見ますね。それで、興味あるものはすぐ発注したりメモしたりする。Twitterは、自分が登録しているのを見ますよね。1次情報はあまり登録していない。目利きの人を何人か登録しておいて、その人の情報を読んでいる。ブログもそれと同じ。目利きのブログをたくさん持っておく。目利きが選ぶ情報は僕と興味関心が同じ人が多いので、最初からソーシャルフィルタリングされたものが入ってくることになる。


通勤時間・家は「個」のinput/outputの場、大学は「協同」のoutputの場

【大城】
電車という話が出てきましたが、移動時間の間には何をされていますか?

【中原先生】
ここ(大学)に来るまでに、とにかく情報を全部インプットしてしまう。逆に言うと、ここに来ると一切それができなくなる。移動時間はTwitterをやっているときもあるし、ブログ、新聞、文献、論文を読んだり...。とにかく常にインプットです。逆に大学に来たら、俺、一日中喋っているよね(笑) ミーティングも授業も打合せも基本的に喋っている。正直、大学に来て本を読んだことはほとんどない。論文を書くのも家。大学は、人と話しながらアイデアを作ったりするけれど、自分のアウトプットを作るのはやっぱり家なんだよね。

【大城】
じゃあ、基本的にインプットもアウトプットも大学以外の場で、ということですか?

【中原先生】
「個」はね。コラボラティブなアウトプットとか授業とか、院生との議論、共同研究者との打合せは全部大学。そこはすごくはっきりしていると思う。



■□■□■ 2.内省編 ■□■□■



奥様、Twitter...自分の思考に対してすぐに反応が得られる場を持つ

【大城】
ブログや『リフレクティブ・マネジャー』でも触れられている「奥様リフレクション」(※1)が興味深いです。「奥様リフレクション」も含め、先生は、一日の間にどれくらい、どんな場所・状況で内省していますか?先生にとっての一番の内省の手段は何ですか?

(※1奥様リフレクション...日々の仕事上の悩みや苦労について、奥様に話すこと。奥様に伝わるように、言葉を選んだり言い直したりしているうちに、自分自身が何かに気づくことがある。あるいは奥様から返ってくる思いもよらない質問が思考のきっかけになることもある。)

【中原先生】
まあ、特に最近だとTwitterとカミさんが大きいかな。どっちも、つまんない話をしたら反応がないんだよ(笑) 例えば、ある研究を始めようとして、その話をした時に「それ何が面白いの?」って返ってくる。すると、「ああ、これは一般のビジネスパーソンには刺さらないんだな」って思うじゃん。Twitterもそうで、呟きがすごく面白かったらすぐにMentionが来る。同じことを呟いたとしても、僕の研究のテーマはビジネスパーソンだから、ビジネスパーソンに刺さるように喋んなきゃならないじゃないですか。それはすごく反応としてすぐにわかるよね。だから、そういうプチ・リフレクションというかPDCAの短いサイクルは、やっぱり部分的に出すことで得られる。


研究に関する思考は"ダダ漏れ"です。

【中原先生】
面白いのはさ、そういう途中のプロセスを出すことは、最初は「そんなことやったらパクられるよ」ってよく言われていたんだけど、面白いものってさ、パクれないんだよね。だってさ、やっぱりその情報を思いつくコンテクストと、そこにある思いがある。「僕はこんな研究します。どうです?面白いでしょ?」って言っても、他人にはわからないんだよね。だから、僕は基本的には自分が面白いと思ったものは全部言っちゃっている。脳味噌ダダ漏れ状態。

【大城】
本当に面白いものはパクれない!ということですね。

【中原先生】
形式知になって流通するものは絶対パクれないと思う。例えば、逆にアナログな場で僕が「こういうこと面白いと思う。ここにはこういうコンテクストがあって。こういう問題があって、こういう人たちに刺さるんじゃないか?」っていうことを、熱っぽく語ったら、パクられるし、パクれると思うんだよね。


僕のブログは、僕が一番検索していると思う。

【大城】
先生は、考えてらっしゃることは全部出しているんですね!

【中原先生】
そう。でもそれはいいこともあってね。カミさんのリフレクション以外、Twitterやブログは、全部形式知・テキストになっているでしょ?全部検索可能なんですよ。だから、僕のブログは僕が一番検索していると思う。Twitterもそうだけど。例えば「ショーン」って入れたら、僕が過去10何年間でショーンについて書いたものが全部出てくるじゃないですか。そういう使い方だよね。やっぱり「書く」というのはリフレクションに重要なんじゃないの?



3か月に1回ぐらいはオフサイトミーティングをやっています。

【大城】
『リフレクティブ・マネジャー』で述べられていた「オフサイトミーティング」(※2)について気になりました。先生ご自身は、オフサイトミーティングやアンプラグドラーニングをどのように実行されていますか?

(※2オフサイトミーティング...目の前の仕事から(物理的にも)距離を置き、普段は考えないような問いに、人々の対話を通じて取り組むこと)

【中原先生】
それは、やっているね。3か月に1回ぐらいかな。共同研究者と行く時もあるし、僕と同年代の若い世代の研究者同士で集まって、本当にネットもコンピュータも使わず、自分がどういうこと今後やっていきたいのか?を考える。

この間やったのは、「このままやったら自分が10年後何を成し遂げているか」というテーマ。ワークショップみたいだよね。その時は、僕自身が発表した後に、「10年後に中原は何を成し遂げていると思っているか?」って他の人が勝手に予想するわけ。それをやると、「あー、あながち間違ってない方向に皆に思われているんだなぁ」とか、逆に「強烈な誤解がここにあるんだな」って思う時もある。あとは、意外と勇気づけられちゃったりしてね。その時すごく印象に残っているのは、後輩に当たる大学の先生に、「あんたのコアコンピテンシーは人を巻き込むことと、コツコツやることなんだ。だから今まで通りやればいいんだ。」って言われたこと。「急がなきゃ!早く成し遂げなきゃ!」って僕自身は思うんですよ。それが意外に俺の中では刺さった言葉だった。


フィードバックをくれる他者を、自分の周りにどうデザインするか。

【中原先生】
去年、エグゼクティブコーチにご支援いただいていたことがあって。コーチというのは、目標達成のための、話を聞いてくれる外部の人ね。ある会社の好意で付けていただいたことがあって、それは本当に部外の人、つまり研究者じゃなかった。すると、大学以外の人からの僕の「見え」がわかってすごく良かったな。結局、去年1年間で僕は生産性が上がったんですけど、「それは今やらなきゃだめなんだな」とか、そういうコーチとの対話が良かったのかもしれない。

【大城】
それはコーチの方と定期的に会って...ということですか?

【中原先生】
本当は2週間に1回ぐらいなんだけど、忙しいので3週間に1回か、1カ月に1回になる。それは良かったかもしれないです。今、研究の基盤になっていることとか、自分の研究をまとめようと思ったのも、コーチの人との対話で気づいた。だから、他者をどう持つか、自分に助言・指導・フィードバックをくれる他者を自分の周りにどうデザインするかということだと思うんです。だから、それはすごく意識的にやっていますね。だってそれが自分のセオリーそのものだからさ!そうじゃないと説得力ないしね(笑)


「人は無能になるまで成長する」...それを止めたい!

【中原先生】
よく「人は無能になるまで成長する」っていう言い方があって、人はどんどん仕事すると無能になっていくんですよ。だんだん自分が見えなくなったり自分の仕事の意義が分からなくなったりするじゃん。で、管理職とかだんだん地位も上がっていくと、自分にフィードバックする人がいなくなるじゃない?すると「無能になるまで成長する」という皮肉な状態になる。いつかは自分だってそうなるかもしれないけど、今年で35だし、なるべく止めたいなぁ、みたいな(笑)



■□■□■ 3.Learning Barの裏側編 ■□■□■


9月のLeaning Barを企画するのは5月末です。

【大城】
『リフレクティブ・マネジャー』の中で、「講演は、依頼したり依頼されたりするものではなく、依頼する人と依頼される人がパートナーシップを結んでともにつくりあげるものではないか」と述べられていたのが印象的でした。先生が講演を依頼する際に、講演の趣旨や投げかけたい問い、どんな場づくりにしたいかといったコンセプトを共有してコラボレーションを進めるという作業は、具体的にはどうやって行っているのですか?

【中原先生】
9月のLearning Barを企画するのは5月末ですよね。4か月前だから、普通の講演に比べると、まあまあ長い。で、やっぱり「今一番この人に語って欲しい」とかいろんな伝えたい要素があるじゃん。その中で、僕はオーディエンスについてよく分かっている。相手がコンテンツのエキスパートだとすれば、それを上手く合わせて最高のプログラムにするにはどうすればいいかってことは考えますよね。だいたい2、3回は会うかな。「私は依頼されているんだか、仕事されているんだかよくわかりません」って言われる(笑) 依頼されたってことは、普通は「先生、好きにばーんと喋ってください。」というスタンスじゃん。僕は違うからさ。逆に言うと、そういうことを言っても怒らない人を選んでいると思う。

【大城】
そうやって3回ゲストの方と会っている時に、何をされるのですか?

【中原先生】
一緒に「どういう場にしましょうか?」って考える。大抵そういう人は、既存のプレゼンを持っているよね。たとえば、最初は、酒井さんの(Learning Bar ※3)は、ケーススタディは入っていなかったけど、酒井さんの持ち味を出すにはケーススタディをやってほしいと思った。それは酒井さんのプラスにもなるし、Learning Barをやっている僕にとってもある種の挑戦だなって。それで何度かお願いして、こうなったらどうだ、ああなったらどうだというのをやりとりした。

自分が講演依頼を受けるパターンもありますよね。僕、基本的に月にたぶん1,2回しか受けないんですよ。その時にも、そういうことをやっている人とやりたい。「中原さん、好きにどーんと喋って。」とか「書籍の内容をちょろっと喋って。」って言われたら、大激怒するよね。だからほとんどお断りしています。だってそれが仕事じゃないもんね。
(※3 2010年5月20日Learning Bar「ケーススタディで新たな人材開発戦略を構想する」ゲスト:酒井穣氏(フリービット株式会社)



■□■□■ 4.研究テーマ編 ■□■□■


「大人の学び」に行こうと思った時は、協調学習は全て捨てたと思っていた。

【大城】
最後は、ちょっと仕事術から離れますが、研究テーマについて伺います。『リフレクティブ・マネジャー』の「あとがきという名のリフレクション」も大変興味深かったです。そこでは、学部・大学院の頃から協調学習の研究に取り組まれてきた先生が、メディア教育開発センター(現・放送大学)、MITを経て東京大学に赴任された時に、現在の「『大人の学び』を科学する」というテーマを選択されたことが書かれています。「協調学習」と「働く大人の学び」はつながっているとしても、やはり研究テーマとしてはかなり大きな転換に見えます。現在の研究テーマを選択された動機について詳しく教えてください。

【中原先生】
そこ(『リフレクティブ・マネジャー』)にも書いたけど、「協調学習」っていう状態って、あえてそういうラベルを貼らなくても、もう皆やるようになっているじゃん。Twitterでの情報交換も「協調学習じゃないか?」っていうと、協調学習だよね。あの頃2003年でしょ?ある種、ネットを使って協調学習するのがインフラとして「来る」だろうなって。それが研究として成立しにくくなるだろうな、というのはすごく思いましたよね。あともう1個は、せっかく大学に来るんだから、最終的に研究者がやるべきことって、自分の分野を作るってことじゃないの?俺はそう思ったから、「それは何かな?」って。

で、正直に話すと、今は結局そうなっているけれど、「大人の学び」に行こうと思った時は、協調学習は全て捨てたと思っていた。ゼロだと思っていた。で、本当に信用ゼロ、ラポールゼロ、知識もゼロのところから、少しずつ、少しずつ、周りの人や企業の人の信頼を得てやっていく。でもさ、不思議なことに、俺が思う「大人の学び」の面白いものって、協調学習なんだよね。他者に支援された学習とか、他者に促される内省とか...結局「他者」というのが自分にとってすごく大きいんですよ。


『職場学習論』は「他者に媒介された大人の学び」の本です。

【中原先生】
自分の学習観が、一人で学習するっていうのをあまり信じていないんだよね。僕の話をずっと聞いていてわかったと思うけど、結局、俺、人を利用して学んでいるじゃん?呟いて、誰かに投げかけてそのレスポンスを以て自己を補正する、ということを意識的にやっちゃっているでしょ?まあ、そういう人間なんですよ、もともと。自分一人だけでコツコツ、というのはあまり得意じゃない。人を巻き込んだり、人に助けたりしてもらいながら自分を駆動させるっていうか。

だからなんだろうね。7年前に、「大人の学びだ!」って言ったときは、完全に捨てたと思っていたけど、結局そういう学習が自分の描きたい学習なんだって気づいて、ようやく今年本出ますけど、『職場学習論』っていうのは「他者に媒介された大人の学び」の本なんですよ。だからなんか笑っちゃうよね。「また来たかー」っていう。他者に支援された、他者のコミュニケーションに媒介された働く大人の学びの本になっちゃっているんですよ。自分の中で、「他者」と言うキーワードは捨てられないですね。


「他者」というキーワードの原点

【大城】
つながっているんですね。

【中原先生】
捨てたつもりだったんだけど、DNAレベルっていうか。たぶん初めての薫陶を受けた先生との中で作られる学習観とか研究観ってすごいと思うよ。俺の場合は佐伯さん(※佐伯胖 東京大学名誉教授)だったから。佐伯さんが当時言っていた「他者」とか、他者に媒介されたヴィゴツキー的な学び、共同体の中での学びとか。要は、学習を個体に閉じたもの、還元主義的に捉えないじゃないですか。その薫陶を最初に受けて学問シャワーを浴びているので、なかなか変われないよね。変わるべきでもないのかもしれないと思う。



食わず嫌いするな!

【大城】
最後に、研究テーマを模索中の学部生・大学院生に向けて、テーマの選び方や情報収集の仕方についてアドバイスをください。

【中原先生】
学部生だったら話は早くて、それは好き嫌いをせずに全部勉強してくださいということじゃないの?そうすれば好きなことも嫌なこともわかるでしょ。例えば、俺は法律や経済学の本を読んでもさっぱり頭に入らなかった。こんなに本好きなのに!入んないものは入んない。それはさ、「俺は好きじゃないんだ」、好きじゃないというよりは「俺がやるべきことじゃない」って分かる。でもさ、そういう食わず嫌いをせずに食べるっていう経験がないと、好きなものが分からないと思うんだよ。だからとにかく1,2年の頃は本をたくさん読むってことだと思うし、好き嫌いをせずに勉強すること。


「絶対に自分で問題を抱えるな。」&「ギブギブギブギブテイク」

【中原先生】
大学院生の場合はテーマが決まっているでしょ。院生ね...。なにで困ってるの、みんな?僕の研究室のマネージメントのやり方がすごく共同体を重視するわけですよ。だから「お互いに助け合うことが重要ですよ」って言っている。「絶対に自分で問題を抱えるな」って言うね。

【大城】
それは、問題を抱えないで、助け合うということですか?

【中原先生】
まず自分で問題を持っているわけだよね。で、必ず行き詰るじゃん。自分で問題を持っていて、抱えすぎるとなかなか進まないから「色々言ってくれる人を自分の周りにたくさん作りなさい」って言っている。逆に言うと、そこに関係論的なメリットが成立しないと誰も助けてくれないでしょ?だから「どんどんギブしなさい」「ギブギブギブギブテイク」っていつも言っている。自分で問題がない人は大変だけど、大体ここの院(学際情報学府)の場合は、大抵、解決したい問題をみんな持って来ているよね。



■□■□■ 5.鞄の中身を見せてください! ■□■□■

【大城】
では最後に、先生の今日の鞄の中身で、いつも持ち歩いているものを見せてください。

shigotojutsu.JPG
(鞄の中身)iPhone、データ通信カード、ICレコーダー、MacBook Pro、本3冊

【大城】
ICレコーダーはなぜ持ち歩いているのですか?

【中原先生】
仕事柄、企業の人と喋っていることは多い。で、たまたまそこに居合わせた誰かが重要なインフォーマントだったり、たまたま面白いことを喋ったりするじゃん。そういう時に「ちょっといいですかー!」って、ぱって置くわけ。もちろんその時メモもする。本に書く時などに、細かいところは、こっち(ICレコーダー)から引っ張る。常に持ち歩いている。

【大城】
まさに、先生のお仕事道具ですね。先生、本日はありがとうございました。

<2010年6月14日、福武ホール1階・学環コモンズにて>


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編集後記

「目利き」を集める、キーワード検索で片っ端から全てチェックする...日々の仕事の隙間を縫って貪欲に情報を集め、インプットしている中原先生の頭の中は、全部「ダダ漏れ」とのこと。テキストの形でダダ漏れにすることによって、自分の頭の中を検索可能なデータベースにし、内省に利用している先生。「僕のブログは、僕が一番検索していると思う。」という言葉が印象的でした。

そして、毎日お忙しい先生でも、オフサイトミーティングの機会を意識的に定期的に作られているのに驚きました。その現場をちょっと見てみたいと思いましたが、ネットもパソコンもなければ、Ustream中継はそもそも無理でしたね。残念!(笑)

情報収集も、ダダ漏れも、オフサイトミーティングも、全て「自分にフィードバックをくれる他者を、自分の周りにどうデザインするか」という先生の学習観・研究観のもとに行われていることがよく分かりました。

院生である自分も、「ギブギブギブギブテイク」を肝に銘じようと思います。自分の周りに、自分を助けてくれる誰かにいてもらえるように。

中原先生、お忙しい中、貴重なお話をどうもありがとうございました。

【大城 明緒】

2010.07.25

【研究者の仕事術】 北村智 特任助教

みなさま、こんにちは。D1の池尻良平です。

【研究者の仕事術】シリーズも残すところ2回!今回は情報学環 ベネッセ先端教育技術学講座 特任助教 の 北村 智 さんに研究者の仕事術をインタビューしてきました。

北村さんはメディアコミュニケーションや社会ネットワーク論を専攻されながら、学生のころから現在に至るまで教育工学領域の共同研究もされています。そんな北村さんに、今回は「研究の動機」「研究の仕方」「共同研究のコツ」「将来の夢」の4つのテーマを聞いてきました!ではどうぞ。


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1、研究の動機
Q. メディアコミュニケーションを研究テーマに選んだ経緯は何だったのですか?


北村さん「すごく時代的なものがあると思うんですけど、僕が高校生の頃はすごいポケベルが流行ってたんですね。ポケベルコミュニケーションをすごいやっていた女子高生たちが目の前にいたわけですよ。僕はやっていなかったんですけど、それをみながらすごいなーとかなんか変わってんなーとか思ってたわけです。

 あと、1995年にwindows95が出て、これからはインターネットの時代だとかネットコミュニティの時代とかになったし、大学に入ったのが2000年なんですけど、2ちゃんねるや一般の人が作っている「テキストサイト」と呼ばれるWebサイトなんかが話題になったりすることがあったわけですよ。それからちょうど、携帯電話を(ポケベルコミュニケーションを傍観者として眺めていた)自分も持つようになって、携帯電話でEメールを送るのも当たり前になってっていうのが大学1・2年生の頃だったんです。

 そういうような時代のせいもあったのだと思うけど、高校生のころからコミュニケーションって何なんだろうなあって関心があったんですよ。だから大学に入る前からコミュニケーション系の心理学みたいなことはしたいなと思って、大学3年生からは社会心理学専修課程に進学することが決まったんですね。

 あと大学1・2年生のときに、僕はパソコン屋で働いていたんです。そこでパソコンの自作パーツを売っていて、商品についてお客さんに聞かれたらちゃんと答えないといけないし、説明しないといけないんですけど、結構なスピードで新製品が出てくるんです。だからそういう情報はネットで集めていたんですよ。日常的な生活の方では、ネットどっぷりでコンピュータの話ばっかりしてたわけです。そういうのもあって、ネットコミュニケーションみたいなものとコンピュータには関心があったわけです。

 それで大学で調査実習があって何か調べなければいけないって時に、「人はなぜウェブ日記を書き続けるのか」っていう社会心理学の論文を読んで、そういうことが研究テーマになるってことがわかって、それでメディアコミュニケーションのようなテーマに関心をもつようになったんです。」


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2、研究の仕方
Q. どういう研究のスタイルをとっているのですか?

北村さん「アイデアを思いつく時は、歩いている時です。というか、アイデアを思いつくために、散歩によく行きます。散歩でぐるっとその辺を歩いて考え事をして、戻ってきて書く。割とどうでもいいときには、そんなふっとは思いつかないことが多いです。なので、外でふいにアイデアを書き留めるよりは、整理して書くってことの方が多いです。」


Q.読む文献を探す時っていつもどうされているのですか?

北村さん「文献検索ではどういうつながりから文献を見つけ出すのかということをわりと意識しています。おおまかにいうと文献間のつながりというのは4つくらいで、まず1個目が「キーワード」つまり「語」ですよね。2個目が「著者」。3個目が「引用」。最後が「ジャーナル」。この4つを使って絞り込んでいく作業をするんですよ。つまり、自分の関心のあるキーワードだけだと見つけるのが難しくなってくるので、それに人を混ぜたりとか、後はジャーナルを混ぜるっていうのをやっています。

全然知らないけどとにかく調べないといけないっていう時は、大体教科書的な本を読んでみて引用文献を見ていきます。引用されている論文は、著者が重要だと思った内容が一行くらいで書かれているので、ほう、その論文にはそういうことが載っているのかということをチェックしていく感じですね。後は比較的新しめの研究論文を読んで引用されているものをチェックしていって、それを読むようにして研究の流れを知っていく形を取ります。

 後、もし人を調べていて自分の関心のあるテーマがよく載っている雑誌が見つかったら、そのジャーナルでよく載っているものは何だろうと思って、ジャーナルに載っている論文に全部目を通します。それで、キーワードとは関係なく、そのジャーナルの共同体でホットトピックになっているのは何なのかとか、よく使われている研究方法は何なのかとか調べます。

 その中で自分の関心に近いジャーナルが見つかると、海外の雑誌だと新刊が出るとアラートで目次を送ってくれるサービスがあるので、それに登録して全部目次を見ています。で、気になったものがあったらアブストラクトをチェックして、さらに気になったらダウンロードしてどんな分析なのかなって中身をざっと読む。もっと気になったらちゃんと読むって形にしています。今は20誌くらい(もうちょっと多いかもしれない)登録しています。」


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3、共同研究のコツ
Q. 教育工学の方とたくさん共同研究をされていますが、違う領域の方と共同研究をする際に成功させるコツって何かありますか?

北村さん「共同研究といってもいろいろなスタイルがあるのですが、教育工学の共同研究では皆で協力して何かを作ったり実践したりって場合がほとんどなので、その研究はどういう関心のもとに行われていくことになるのかということを意識します。特に、共同研究をする相手はどういう研究関心で研究をしているんだろうかというところを意識します。

 だからまず共同研究する場合には、共同研究者の論文を手に入るものは全部読みます。やっぱり研究者の人が何を考えてきたのかとか何に関心があるのかっていうのは論文にすごく反映されるので、それは本当に一緒にやるんだったら読まないとよくわかんないなと思っているので。

 一緒にやらなきゃいけない人に関しては、どういうことに関心があるのかっていうのはすごく関心があります。だから、山内研とか中原研周りの人で手に入るものは大体読むようにしています。人ごとにフォルダを作ってその人の論文を入れたりもしています。でもそれだと知識だけなので、実際に話してみてどういうことに関心があるのかとか、どういうことが得意なのかっていうことがだんだんわかってくる感じです。

 後は僕がかかわる教育工学領域の研究は与えられたテーマ、やらなきゃいけないテーマが多いのであまり自分でテーマ設定をすることはないですけど、場合によってはこのテーマだったらあなたは関心を持つのじゃないかって話を切り出すことはあります。

 要するに、共同研究相手のことをよく知るっていうことが大切なんじゃないかと思っているんです。


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4、将来の夢
Q. 研究者として、将来の夢ってありますか?

北村さん「なんだろうな。うーん、すごくはっきりとしたものはないです。というのは、こういう研究って社会の変動を後追いしてテーマを決めているところもあるので、ある種どう変わっていくのかっていうのをまだまだ見ていきたいとは思いますね。それを予測しているわけじゃなくて、自分もだけど色んな人が、社会が変わっていく中でどうやったら幸せになれるんだろうかなあっていうことを考えています。」

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[編集後記]
インタビュー後、北村さんに研究者に必要なことを聞いたところ、「知りたいと思う気持ち」という言葉をいただきました。北村さんの仕事術を一言で言うと、他人を真摯に知ろうとしている点に集約されるのかもしれません。「人を大事に思うこと」っていうのは、きっと全ての仕事の根幹にあるんだなあと思いました。


北村さん、今回は面白いお話を聞かせていただき、ありがとうございました!


[池尻 良平]

2010.07.20

【研究者の仕事術】 森 玲奈 特任助教

みなさま、こんにちは。
M1の土居由布子です。
【研究者の仕事術】シリーズ第7回は、
情報学環・特任助教である森玲奈(もり れいな)さんへのインタビューです。

森さんには、日頃から私(土居)の研究相談をさせていただいています。
私自身、始まったばかりの院生活でいっぱいっぱいなんですが、私以上に忙しい、5つも6つもプロジェクトを掛け持ちされている森さんに仕事術を伺ってみました。

Q:研究テーマの種探しはどのようにされているのですか?

簡単にいうと「違和感探し」でしょうか。

例えば、修士の時から始めた個人研究では、大学時代から自分がワークショップ実践をする中で感じていた自分の中での「モヤモヤ」、「問題意識」がベースとなっています。その後も、研究や実践の中で難しく感じること、すんなりいかないなと感じたことなどについて、立ち止まって考えてみるようにしています。それが時を経て、研究に生かされているような気がします。

修士1年の夏頃までに、自分の問題関心の周辺にある論文や報告書を検索して徹底的にレビューしました。そういったことを頭の中でマップにしました。
レビューの作業は大変でしたがとても楽しかったです。自分のモヤモヤの答えが、どこかにあるのをなんとなく期待していたんだと思います。でも、レビューの結果分かったのは、「答えを探してもそこにはない」ということでした。
私が現在研究テーマとして扱っている「ワークショップ」や「カフェイベント」という実践は、研究自体が少なく、特に、教育の文脈ではあまりやられていないことがわかりました。

実は、最初に持っていた問題関心をそのまま研究にすることはしなかったんです。その奥にあったモヤモヤが、社会的にどのような意義を持つのかが大事だと思い、切り口を変えてアプローチしていこうと思ったので。そういう意味では、「種」がそのまま、すぐに研究になるわけではないのかもしれませんね。
研究することを仕事にしている人、即ち、プロの研究者というは、その一連のプロセスを自分自身の中、あるいは仲間とやっているのだと思います。私はまだ半人前ですが。

あと、できるだけ細切れにでも時間をつくっては街を歩き、情報収集はしています。人の様子を観察する、書店や文具店、雑貨店で何がどのように売られているかを見ることも意識的に行います。人と会いに行くことで、新しいことを知ったり、アイディアがでてきたりします。

twitterの活用もしています。2009年秋頃から本格的に利用を始めました。今ではフォローさせていただいている方が5000人程度いますので、その皆様のツイートから「モヤモヤ」「違和感」といった研究のヒントや、仕事に使えそうな面白い情報を得ることも沢山あります。自分の持っている「違和感」を発信してみることもあります。だんだん忙しくなってきて街歩きや人に会うなど時間がとれなくなっているのですが、twitterでの情報収集はそこを助けてくれている感じかなぁ。おかげで問題関心も広がりましたし。

Q:森さんはどのように忙しい日々を過ごしていますか?またスケジュール管理のコツがあったら教えてください。

スケジュール管理について、特別なことはしていません。手帖に書くことくらいです。

私が関わっているプロジェクトのスケジュールは、大体、自分の都合だけでは決められません。例えば、UTalkというカフェイベントは、定期的に毎月開催しているものですから、自分がどういう状態であっても、都合で日程を変えることはできません。また、今、産学連携のプロジェクトにいくつか参加しているんですが、それらは参加メンバーが多いため、ミーティングの日程調整1つでも大苦労。中にはミーティングの日程決めを2−3か月以上前から行う場合もあります。

研究関心が「ワークショップ」のようなインフォーマルラーニングにあるため、土日に仕事が入ることがとても多いんです。地方出張もあります。
ですから、ミーティングがない日の中から意識的に「大学に来ない日」をつくっています。平日にお休みをつくらないと、休みがなくなっちゃうので。
でも、お休みといっても、家で書き物をしていたり、外で情報収集したり、人に会ったりすることに充てているかな。

Q:ストレス発散について何かしていることはありますか?

実は、気分転換するのは得意じゃないんです。

関わっているプロジェクトがいくつかありますが、それらで組ませていただいているメンバーや文脈は、皆異なるので退屈しないです。皆さんそれぞれ違った仕事術を持っていて、それを傍でみていられるだけでも楽しいですよ。
発散しなくても、違うことをいろいろやることで、バランスが取れているので、結果、研究する中でストレスはそれほど溜まらないのだと思います。

それと・・・もし仕事で何かにつまずいた時があったとしても、最初はへこむしイライラもするけど、一歩引いてその状況を見てみる。
すると「つまずき」や「困ったこと」について考えることそのものも、自分の研究関心の範疇っていう感じなんですよね。なぜなら、私は、人が学んでいくプロセスに興味があるので。自分自身のつまずきですら、研究のネタなんです。だから、困っていると同時に、困っている自分自身のことを「面白い」とも思えるんです。発想の転換かな? 

全てのことが研究につながる。「種」になります。
仕事のストレスは仕事で発散する。それが一番ですね。

Q:森さんにも苦手なことはありますか?

得意じゃないこと、滅茶苦茶多いですよ。例えば、人づきあいとか。

私って、本当は一人でいることが好きなんですよね。考え事をする時はたいてい一人。
でも、人との出会いを通して新しいことを知ったり、思いついたりすることが多いのも事実です。新しいことを始めるときは「この人と何かやったら面白いんじゃないか」と思うこと、そんな妄想がきっかけになったりします。これ、思えば伝わるのか、今まで結構実現できているんですよ。
他にも、「AさんとBさんのコラボレーションをみてみたい」と思って、両者をこっそりつなぐことも多いです。

興味があることが多いように思われがちですが、興味あることと興味ないことの落差も大きいんです。それも悩みかな。
これからは、興味あることを深めるだけではなく、興味の幅そのものも、どんどん拡げていけたらいいなと思っています。

参考:
森玲奈さんのホームページ「はりねずみの道具箱」 http://www.harinezuminomori.net/
森玲奈さんのtwitter http://twitter.com/hari_nezumi

2010.07.14

【エッセイ】共同体の孵卵器としてのラーニングコモンズ

そろそろ夏学期も終わりを迎え、最終回になる授業もでてきています。協調学習やグループ学習をする授業では、独特の連帯感が生まれます。その後飲み会をしたり、別の機会に再会すると、長期間続く人間関係を得る学生も多くあらわれます。
大学における人間関係は社会関係資本の礎であり、新たな共同体が生まれるきっかけにもなります。
今まで大学の授業は、授業時間中にどれだけ成果があがるかという観点で学習活動が構成されてきました。しかし、大学の持つポテンシャルを活かすためには、授業で培われた人間関係を新しい実践共同体 (Communities of Practice)につなげるという視点から考えることも重要です。
授業の同じグループで関心を共有した学生が、その問題意識をもとに研究会や社会的活動につなげるプロセスを支援することにより、学習が埋め込まれた実践共同体の誕生を支えることができます。
最近図書館を中心にラーニングコモンズの設置が相次いでいます。そこで行われる学習支援が、授業の課題サポートにとどまらず、授業から生まれた人間関係が新しい実践共同体の誕生につながる孵卵器の役割を果たすようになれば、大学は生き生きとした自主的な活動の場に変わるでしょう。

[山内 祐平]

2010.07.10

【研究者の仕事術】 佐藤朝美 助教

みなさま,こんにちは。
M1の柴田アドリアナです。
【研究者の仕事術】第6回は,助教をされている佐藤 朝美さんにインタビューに伺いました。

佐藤さんの研究テーマは幼児を対象とした学習環境のデザインです!幼児を取り巻くメディア環境、ナラティブストーリーテリングなどを専門に研究なさっています。
家族、仕事、研究...こんな忙しい中の佐藤さんの仕事術を伺いましょう!

Q. 大学の時代は何を勉強していましたか?

小学生の頃「ベルサイユのばら」っていう漫画を大好きで、憧れていて、絶対西洋史学科に行きたいと思っていていました。けれど、私の大学はハンムラビ法典とか、イギリ スのコレラの歴史を専門にしている先生などで、フランスのブルボン王朝とかを専門にしている先生が全然先生いなくて、面白くなかった!卒論で書いたのはフランスのポンパドゥール夫人の絶対王政の時代のことで、今の研究とは全然関係ないですね...

Q. では、今の研究テーマになったのはいつ頃ですか?

CSKというコンピューター会社でシステムエンジニアとして働いていました。子どもが生まれたのを機に、やめました。

たまたま、近所に武蔵野美術大学があって、メディアアートをやりたいと思って、家から通い始めました!しかも、デザイン情報学科っていうデザインと情報がいり混じったような学部でした。そこで小さい子供がいたインタラクションデザインの先生がいて、なんか、子供向けのデジタル玩具を作りましょうっていう話になりました。カードを用いたインターフェースで、バーコードを読み込ませると映像が流れるっていう作品を作ったんですよ。コンピュータグラフィックスをやっていた男の子と一緒にDirectorでLingoという言語で書きました。
Prototype 1
Prototype 2
Prototype 3
*Shockwave Playerのプラグインが必要です。

コンテンツを使った子供はすごく喜んでくれたけど、なんか少しは学習しているのではないかなと思っていて、いったい何を学んでいるだろうとすごく興味を持ちました!ただ遊ぶだけではなくて、その学ぶ力を引き出すようなものを作りたいと思いました。
美大では教育まではいかないので、教育学部ではコンピュータっていうことは関係なくなるから、どうしようと思っていた時に山内研のことを知りました。

Q. 小さい子供を育ちながら院生になるのは大変だったでしょう!

ムサビはいったん卒業して、また主婦の生活に戻りました。
子供が小学校一年生になった時にここの大学院に入ったのです。
最初は大変だったですね。子供が小学校一年生って一番のかわりめで精神的にも不安定なんだったので、私も一杯一杯になっちゃいました。その時、一年目の先輩がいらっしゃって、その方も中学生のお子様がいて、中学受験のために会社を辞めたんですよ。それで、子供が受かったので大学院に入りなおしたのです。その方がいうのは足し算の法則でした。
例えば、柴田さんは大学生活を100%やっているじゃないですか? でも私は大学生活は60%しかできないのだけれど、そのかわりに子供の学校生活・教育現場をのぞけるチャンスは20%ぐらい、それから主婦の楽しみとか育児する喜びとか加えると、気がつくと100%以上になってます。
すべてを足し算する。ひとつに対する達成度をみるのではなくて、その達成度を全部足して自分がどれくらいやってるかを評価すれば、いやにならないと言われました。その言葉に救われて当時は時間をさけなかったけど細く長く続けていこうと思って今に至りました。

Q. 仕事の流れに何か特徴ありますか?

仕事についてやらないといけないことを書き出して、一極集中しておかないと絶対忘れてしまうというのがあって。いくつか仕事があって、それぞれはそんなに重たくないけど、ポンポンポンって仕事があるような感じです。ことが生じた時に全部iphoneに書き入れて(To doっていうアプリ)、それを脇において、仕事をします。

Q. 研究の流れにも何か特徴ありますか?

私は後から研究の分野に入って来ちゃったから、皆がやっているような高等教育とか、協調学習とかすごく研究が盛んになっているところには今から入っても太刀打ちができないと思っていて、自分が持っていて他の人に持ってないものを使わないと勝てないっていうか... そういう物を使った方がいい研究が出るじゃないかなと思っていました。専業主婦を長い間やったので、子供とか、家族とか、そして物をテーマにすることが大切じゃないかなと思っています。学校とか子供とのかかわりも情報収集の一環と思って、研究のヒントにしたりしています。

例えば幼児教材をひたすらを熟読する。今はベネッセの進研ゼミをとってます。子供にやらせようと思ってとってるのではなくて、自分がチェックするためにとっています。例えば、ドリル+漫画、ゲームなどの付録やソフトウェアを試しています。あとは、親向けの雑誌もチェックして、この対象の親はどんなことを求められているかなどの情報を集めます。

Q. 佐藤さんの研究スタイルとは?

実生活密着型の感じなのかな?
なんか自分の周りで起きている子供の現象で解決したいこととか、不思議だなと思うことを研究対象としているので修士の時の研究とかもちょっと作って、近所の子とかにやらせて、反応見て、作り直してっていうのはよくやっていましたね。

Q. これから研究者になりたい方々に何かアドバイスありますか?

私は論文はお風呂の中で読むようようにしてます!

すごく集中できるし、家の中であんまり集中できる場所ってないだけど。風呂の中はすごく集中できて...しかも、汚せるから急いで読むのじゃないのか?だから一日一本読める!
シャワーの時はだめだけどね...

そして、最近さぼり気味なんだけど、レアジョブっていうインターネットでの英語会話をやっています。

私は本当に30歳を過ぎてから研究も英語も始めた事ばかりなのです。だから、後輩にむけ手のアドバイスとしては、「遅いって言う事はない!」です。今は研究者っていう人生をはじめて、論文も書けたし、国際学会にも2回発表できたし... 遅い事はないと思いました。山内先生のご指導がいいことはもちろんです。でも、何を始めるにも遅い事はないと思って、恥をかいても気にしないでいけば、なんかいくらでも人生は開けるのかなっと思います!

2010.07.02

【研究者の仕事術】 水越伸 教授

みなさま、こんにちは。M1の菊池裕史です。
【研究者の仕事術】シリーズ第5回は、情報学環教授の水越伸先生にインタビューに伺いました。

僕は今学期、山内先生と水越先生が担当されている「文化・人間情報学研究法III」という授業を受講しています。学生のグループワークに対してユニークな例を交えながら的確なアドバイスをしてくださる水越先生に出会い、「学環にはこんな面白い先生がいたのか!」と衝撃を受けました。そんな水越先生に、今回は「研究者になるまでの道のり」、「研究者になってからの具体的な仕事術」という2つのトピックについて伺いました。ぜひ全文を通してご覧ください!

【研究者になるまでの道のり】

Q1. 水越先生は最初から研究者を目指していたのですか?

高校の頃から人類学をやりたいと思ってて、自分で言うのもなんだけど、ある程度勉強したいというような気持ちがあって大学に入ったのね。ただ、完全に研究者になりたいとか、そんなふうには思ってなかったかな。大学の学部生のときから助手になるまでやっていたデザイン事務所での仕事が面白かったんだけど、すごく辛くて苦しくて・・。だから、なんかもっと「俺はこんなことをやるんじゃなくて、思想とか理論とかをやるはずだったんだよ!」みたいな気持ちがすごくあって、それで毎日毎日(デザイン事務所での仕事が)嫌だったんだけど、一方で現実の仕事もものすごい面白かったのよ。

Q2. 思想とか理論とかをやりたいというのは、学部の頃から考えていたのですか?

それは、社会人の人が大学院で勉強したいと言うのに近い感覚だったかな。山内研でもあるかもしれないけど、社会人のほうがピュアに学問をしたいって言うじゃん。それに近い感覚があったんだよね。大学3年の秋くらいから、ようやくさっき言った仕事(デザイン事務所での仕事)が自分1人でできるようになった感じがしてきて、それで、このままこうゆう仕事を社員としてやってくという道もあったんだけど、俺はそれは嫌だったんだよね。これはいかんと思ったわけ。でも、「じゃあ何だったらいいの?」っていう見通しはないのよ。ただ、それは嫌だなと思って大学の4年のときに大学院に行こうと思ったんだよね。つまり、大学4年生のときに「研究者になりたい!」っていう明確な気持ちはなかったんだけど、コマーシャルな世界で生きていくのは嫌だなと思ってたんだよね。

Q3. なぜコマーシャルな世界で生きていくことが嫌だったのですか?

何か、どっかで嘘だと思ってた。それは非常に虚構だと思ってた。要するに、同じモノ(プロダクト)でもガワを変えたり、ある技術にいくつかのグレードを設けることでそれをパッケージ化して、それにある社会的・文化的なイメージを付与して、記号的な価値を付与して。っていう、まぁ、人々の欲望を喚起して買ってってもらうみたいなさ。要するに送り手が巧妙にマーケティングと設計をして、人の文化的な行動をコントロールするっていう、それが良いかどうかは今考えるとわかんないんだけど、俺はそれはなんかやりすぎだと思ってたんだよね。それで、いつかそうゆうのは崩れると思ってた。こうゆう虚構の体系は必ずいつか崩れるに違いないと思ってた。だから、「俺はこうゆうコマーシャルだったりビジネスライクじゃない方向に行った方がいいよな。」って気はしてたんですよ。ところが、それはそれで面白いんだよな。やっぱりそこにはコマーシャルかパブリックかとか、アカデミックか大衆的かとかそういうことを別にした技法もあったし。あと、途中でやめるのが嫌だった。途中でやめたら負けだなとも思ってた。

研究者にまったくなりたくなかったかというと、それはそうじゃないと思うよ。でもぼんやりとしか思ってなくて、研究者になりたいっていうはっきりした気持ちはないまま、もうどうしてもそこの場所でそのまま行くのが嫌だったんで、パブリックな場として大学院をすごく理想視して考えたんだよね。それで修論を書いて博士に入ったころに、「僕もう事務所でやれることはやれたな。」と思って、それでもうやめようと思ったんですよ。ちょうどその頃僕は助教になれて、それを機に僕はデザイン事務所から足を洗ったんですよ。

【具体的な仕事術】

Q4. 具体的な「仕事術」といったものはありますか?

僕は基本的にケータイとスケッチブックとMacを持ち歩いてる。あと、色鉛筆みたいなものも。僕は基本的に絵でモノを考えるんですよ。そこで一番大事なことは、手書きで絵で考えて、それがある程度形になってからテキストでスライドにしたりするということ。スケッチブックの絵を後でスキャンしてiPhotoに入れておいたりもします。

Q5. それはテキストにならないことをイメージとして残しておくということですか?

うん、そうだね。言葉にならないことをイメージにしておく。あと、これ(スケッチブックを指して)は俺なりにパッケージ化されてて、これを見ると思い出すことがいっぱいあるんだよね。これは、「これを見るとその時に戻る」って言うようなものだから、間違ってもイラレで書き直すようなことをするっていうのはダメなのよ。ニュアンスが消えちゃうから。これはアイディアの種みたいなものなんですよ。アイディアって忘れちゃうじゃん?で、もう一回ここに戻ったときに、「あー、あの時こうゆう気分であんなこと考えてたな。」ということが思い出せて、リンクしているものを思い出すアイコンになるんだよね。

Q6. いつもMacとスケッチブックを持ち歩いているということですが、何かイメージが浮かんだ時に、「Macとスケッチブックのどちらに記憶しておくか」という判断はされているのですか?

それは段階的なもので、ある程度スケッチブックで形を成してきたらパソコンに移るんですよ。基本はこっち(スケッチブック)で考えてますね。だから重くても持って歩かなくちゃならない。あと、これ(スケッチブック)は小さくてはダメなんです、僕は。

Q7. なぜスケッチブックが小さくてはダメなのですか?

それは僕がデザイン事務所にいたときに叩き込まれたことで、手書きでノートをとるときには「大きい紙に比較的小さい文字でモノを書きながら、全体を眺めながら考えていくってことをやったほうが良いよ。」ってデザイナーの人に言われたの。要するに、文字とか記号が置かれている場の関係みたいなものでニュアンスとかが伝わるっていうところがあるから、ワープロで頭からしか書けないというのはダメなんだよね。

Q8. エスノグラフィーなどをやる時に、水越先生独特のやり方といったものはありますか?

たとえばどこかに行った時に、どの階に何があって、どれくらいパーティションがあるかとかを見てます。あと、どの雑誌が置いてあるのかとかも。そういうこう、レイアウトデザインみたいなこととか、どういう服を着ているのかとか、普通インタビューじゃどうでもいいだろって言われるようなことを凄くよく見てますね、僕は。

Q9. それは、何か狙いがあって見ているのですか?

まあ、狙ってはいますよね。それは、「その人たちが本当はどういう人たちなんだろう?」っていうことについて彼らがインタビューで答えてくれることっていうのは、彼らが本当に言いたいことのごく一部に過ぎなくて、言葉にならないものを捉えるためにはモノとか空間とか人の身のこなしとか、そうゆうことが重要だっていう狙いがあるよね。それと、組織の状況認識とかって誰か1人に聞けば分かるとか、インタビューだけで分かるものではないから、そういった意味でも今言ったようなことっていうのが大事だなってことは思ってたことですね。

Q10. グループで仕事を行う際に考えていることなどはありますか?

グループでプロジェクトをやる、あるいは色んな得意分野のある人が連合体を組んで何かをやるときのコーディネートをするときには、自分の仲間だけを集めないようにしてます。なるべく色んな得意分野を持っている人を集めるっていうのが面白いなって思ってて、いまだにそうゆうことが好きですね。

Q11. そういったコーディネートをする際に、多様な人が集まるとうまくまとまらないような気がするのですが、その際に気をつけていることはありますか?

すごくベタな言い方なんだけど、仕事の話だけをしないというか、あれこれと色んな話をしますね。その時に大事にしてるのは、その人の仕事のことだけじゃなくて、その人の人間としての全体をなるべく知ろうとする。だから、話す時にはすごくざっくばらんに気の置けないことを話したり、冗談を言ったり、お酒を飲んだり、その人の氷山の一角じゃない全部を見るようなところまでを分かち合いながら付き合うというような、その人のごく一部では付き合わないといったことを意識してますね。その人の全体性をリスペクトするというか、シンパシーをもってコーディネートをすると、よくある「キャラとか専門性といったことでぶつかる」ということはなくなりますね。まぁ、それは努めてやっているというよりは、僕のキャラクターですけどね。

Q12. 最後に、カバンの中身を撮らせていただいてもよろしいですか?(笑)

あぁ、あんまり何もないけど、いいよ。(笑)

画像

気になるスケッチブックはマルマンのものです!

本日はお忙しい中、長時間のインタビューにお付き合いいただき、どうもありがとうございました!

編集後記

僕が水越先生にインタビューに伺った際に最初に言われた言葉が、「キミはどんな人なの?何の研究をしてるの?」といったものでした。最初はなぜ水越先生がこのようなことを聞くのかがわかりませんでしたが、インタビューが終わったときには、僕を単なるインタビュアー(仕事)としてではなく、僕全体として捉えようとしてくださったのかなと思いました。インタビューの内容からだけではなく、インタビューをすることそのものを通して水越先生の言わんとすることを学ぶことができました。これから関わり合う人に対して、僕もこのような「その人全体を捉えるような接し方」ができるように努めていきたいと思います。

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